ビデオ・CD:Dancing on Dangerous Ground
Riverdance in NYCのビデオでもおなじみのJean ButlerとColin Dunneがリバーダンスを離れたあと再びベアを組んで作ったオリジナル作品。あのJeanとColinが復活し、音楽はSeamus Egan率いるSOLASが担当ということで(わたしRiverdance歴よりもSOLAS歴の方が長いので)、本当にすごいことになるに違いないと期待したものです。
残念ながら興行的にはうまくいかず、ロンドンとニューヨークの公演だけで終わってしまいましたが、この素晴らしいDVDが残っています。これは観るべし。UK版DVDを元に紹介します。
NY公演時のColinのインタビュー、その後のColinのインタビュー、Jeanのインタビューが翻訳ページにあるのでそれぞれ読んでみてください。
『Dancing on Dangerous Ground』のタイトルと、Jean、Colin、そしてTony Kempの名前が表示される。Airが流れはじめ、Tony Kemp演じるFinn McCoolのセリフ。実際には彼の生声ではなく、別の人の録音なわけですが・・・。
暗いステージに青色の照明。舞台中央に20数名のハードシューズを履いたダンサーたちが集まってきます。衣装は黒に黄色(金色?)の縞が少し入った、あまり時代設定を感じさせないもの。裾の長さが脚の長さを強調している感じ。
AirからReelへ。この流れはRiverdanceにおけるReel around the Sunと同じですが、曲調がBill WhelanとSeamus Eganでは異なるのと、DODGでは「太陽」「月」のようなわかりやすい(ある意味ベタな)シンボルがないため、より洗練された印象を与えます。
カメラのアングルは足元(タップ)、頭上(フォーメーション)、客席から(臨場感)と、基本的なところを押さえています。
曲の最後、Jean演じるGraniaとColinのDiarmuidが向かい合い、その間にFinnが割って入る。このあとのストーリーを暗示する演出です。
女性ダンサーはタイトなスカートにタンクトップ、男性はポロシャツにストレッチなパンツ、といういきなり現代的な衣装(LOTDのSiamsa・・・ほど派手ではないですが)。Colinのソロが入ってふたたび群舞へ。
GraniaがFinnの元に嫁入りのためやってくる、という場面でのJeanさまのソロ。背が高いですねー。昔から「Jean姫」と呼ばせていただいてますけど、この作品ではホントにお姫さま。
黒いTシャツ姿の男性陣とColinさまによる練兵風景。腕立てタップです。「練兵風景」自体はLOTDですでに行われているわけですが、単に「部下をしごくマッチョな男」と「Finnに信頼される(けれど裏切らざるを得なくなる)隊長」では要求されるものが異なるはずですし、このキャラクターは歴代のLOTDやDark Lordではなく、Colin Dunneにハマる役だと思います。
NYC版のレビューで書いた「年増女の情にのみこまれて身動きとれなくなっちゃうお人好しの若旦那」っていうイメージはそんなに間違っていなかったんじゃないかと自分で思ったりして。
軍服っぽいカットの衣装を着た男性陣+Jeanさま。バンドの面々が映ります。一瞬映ったパーカッション、Ray Feanさんですね。Finnも登場。
女性陣によるソフトシューズの曲。ここにもFinnが出てきます。結婚式の前にGraniaを連れて自分の城を案内している、という感じでしょうか。ただ、前の曲でもこの曲でも、GraniaはFinnとちょっと距離を置いて踊っています。話の展開を知っているからかも知れませんけど、けっこうな演技力だと思います。セリフない方がいいんじゃないか・・・とまで言うと怒られそうですが。
まあAmerican Wakeです。フィドル・アコーディオン・パーカッション・ギターが登場。音のバランスとしてはベースの音が大きいような気がするんですが出てきません。
いかにもSOLAS、というAirにのったColinのハードシューズ・ソロ。セットの鉄柱を蹴って音を出したりするところがかっこいい。この打撃をColin的と言うべきなんでしょうか。テールの長いジャケットというのもColinさんが個人的に好きそうな衣装。
ピアノや高い椅子が並ぶ酒場の雰囲気。テンポの速い音楽。Diarmuidはピアノを弾いている。それぞれに踊り始める客たち。そこへビロードのワンピースを着たGrania。誘われてハードシューズのアカペラを披露するGrania。「!」それに反応してDiarmuidも速いステップ。やがて掛け合いになってテンポはさらに速まる。接近するGraniaとDiarmuid。
照明が落ちて2人にスポットライト。タンゴっぽい官能的なリズム。Jeanさまは太ももも露わに・・・いやもちろんストッキングははいてますけど(^_^;)。
FinnとGraniaの結婚式。しかしGraniaの心が自分にないことに気づく。(これすべて各役者の表情とカット割りだけで表現してます)
式典のあとに始まるハードシューズのダンス。この作品で特徴的なダンススタイルは、「腰のひねり」。上半身は正面を向いたまま腰からひねることによって、脚の存在と動きを強調しているように見えます。
その中で昨夜の酒場で出会った男、Diarmuidを見つけて身を乗り出すGrania。
Finnのセリフ「そのときから流れが変わった。私は2つの光の間の影となった(日本語版ではもっとまともな字幕がつくと思いますが)」。
宮廷の女たちからFinnや男たちに手渡される杯。このあたりで女性陣のリードをしてるのがSorcha McCaulさん(のはず)。
次々と倒れ、眠りに落ちる男たち。そこに現れるDiarmuid。
二人きりになるDiarmuidとGrania。ソフトシューズの、アイリッシュというよりバレエでありモダンなダンス。照明もカメラもいいんですが、これだけロマンチックな場面になるのは振り付けと音楽が大きいのではないかと。この辺まで来ればもうDODGの世界に入り込んでます。
意識を取り戻し始める男たち。腕は布で縛られている。起きあがるが足元はおぼつかない。このあたり、みなさんちゃんとactorしてます。LOTDでは役者はマイケルとその周辺の数人であとは頭数(失礼!)でしたが、DODGでは全員が役者です。なんかColin氏の受け売りになってますけど、この曲見てるとホントそう思いますよ。
彼らは少しずつ調子を取り戻していくんですが、ここで「あ、アイリッシュだから腕が縛られてても関係ないんだ」と気づきます。ふつうなら不自由の象徴のはずのものが、アイリッシュの魅力・特色になっているおもしろさ。
ソフトシューズの女性陣が男たちに長いコートを着せる。戦闘準備。Sorchaのソロに注目。ここでもやはり腰のひねりとななめの動きが特徴的です。
サーチライトを持って逃げた二人を追うFinnとその軍隊。
ついに捕まるDiarmuidと連れ去られるGrania。Diarmuidの絶望的なソロ。次第に追いつめられるDiarmuid。彼を囲む男たちのコートの内側は深紅。ちょっとMatrix的な衣装ですね。
1対多のアカペラタップの応酬。崩れ落ちるDiarmuid。
死んだDiarmuidを見送るFinnとGrania。悲しみの中のソフトシューズ・ソロ。そしてGraniaもその場に倒れ込む。
プロローグと同じ衣装で登場するダンサー陣。ともに踊るDiarmuidとGrania。時代を感じさせない衣装は、「神話」世界にいることを表現していたんですね。そしてその神話の中で永遠になった二人・・・。
特典映像はメイキングです。すごくぎりぎりのところで作品を形にしていったことがわかります。この中でもJeanさまが「over-cross!」と「腰のひねり」を教えている場面が出てきます。
RiverdanceもLOTDも見たことのない人には難解すぎるかも知れませんが、最低2回は見ましょう。音楽・照明・衣装・ダンスと非常にレベルの高い作品です。2回見終わってからまた主演二人のインタビュー読んで下さい。泣けてきます・・・。日本で見たかったなあ。