海外記事翻訳:Colin Dunne@Radio City
原文掲載サイト: | Celtic Cafe |
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原文ページURL: | http://www.celticcafe.com/Shows/DODG/colin_interview.htm |
一次翻訳: | moriy |
翻訳チェック&コメント協力大感謝: | 熊谷さん、トントンさん |
Colin Dunne(リードダンサー/プロデューサー)
バックステージインタビュー
同席:Julie O'Laughlin(アーティスト渉外担当)
2000年3月11日(土)
インタビュアー:Marcia Bitting, Caitlin Reinold
Colin、特にこの物語を原作とした理由と、それを思いついた時期について教えてください。
Colin Dunne (以降CD):「いつかダンス作品を作ろうと思ってはいたんだ。もちろんRiverdanceで忙しくなったこともあって・・・そのことは心の奥にしまっておいた。1998年の6月にRiverdanceを離れることになって、また作品づくりのことを考えられるようになった。Jean(Butler)とはよく連絡を取り合っていて(Jeanは1996年にRiverdanceを離れている)、ある日電話でなにか舞台を作りたいと彼女が言ったんだ・・・『一緒にやりましょう!』って。そして、僕はOKした。
僕らはラブストーリーをやりたかった。問題は舞台作品になるストーリーを見つけることだった。僕はアイルランドに関係したものにしたいと思っていた。けれど、よくあるレプラコーンとか妖精が出てくるようなのは避けたかった。仲間たちがアイルランドの神話『Fiannaiocht(訳注:フィン・マクールとフィアナ騎士団の物語、文末参照)』はどうかと勧めてくれて・・・Diarmuid and Graniaの物語に巡り会ったんだ。
酒場を舞台にしたシーンをずっとやりたいと思っていて、そういう、とても現代的なものだけれど、アイリッシュダンスをベースにしているものをいろいろ思い描いていたんだ。結婚式のシーンもそうだね。(現在、両方ともそれぞれ『深夜の酒場での出会い』『FinnとGraniaの結婚式にて』という形でDODGの演目となっている)」
音楽にSolasを起用した意図は?
CD:「Seamusと僕、そしてJeanとは古い友達なんだ。ある時アイルランドのレストランで一緒に話をしていた時、自分たちが計画していた舞台について話した。そうしたらSeamusはすぐに「それ、オレがやるよ。オレにやらせてくれ!」って(笑)。僕らはOKした。他の人やグループから、いくつかデモはもらっていたんだけど、それ以前からSeamusの仕事はよく知っていたから・・・僕たちはSeamusを選んだ。」
曲作りに関してSeamusとSolasはあなたたちと共同で作業をしたのですか? それとも全面的に任せてしまったのですか?
CD:「Seamusがうまくやってくれた。僕たちはだいたいの方向性を決めるまでは一緒にやっていったんだけど、後は彼らがみんなやってくれたよ」
ロンドンでのオープニングの後どんな変更がありましたか?
CD:「ダンス表現に関してはMaire Clerkin(振付補)、演技指導ではCaroline Hadley(演出補)がすごく力になってくれている。もちろん、Jeremy Sturtというすばらしい演出家がいる。」
Julie O'Laughlinが補足したところによると、いくつかのセットの変更も行われ、可動式の床がひとつ減り、舞台上での移動や各場面のセットアップを容易にした。照明もより明るいものになったが、演出上の効果は失われていないという。
カナダの次の公演地はどこですか? ドイツや日本、オーストラリアはツアースケジュールに入っていますか?
CD:「もちろん。当然だよ!」
Julie O'Laughlin:「現在のところ、正確な日程は決まっていません。おそらくカナダを西に横断して、その後西海岸を南米の方までいき、そしてまた逆戻りしてアメリカを横断してから、ヨーロッパに行くことになるでしょう。すべての会場が決まっているというわけではありません」
CD:「18ヶ月のツアーは是非アイルランド、ダブリンで締めくくりたいね」
CDやビデオは発売されるのですか?
CD:「もちろんだよ! ビデオの方はまだ編集の段階(post-production)だ」
Julie O'Laughlin:「ロンドンでかなり撮影をしました」
(DoDGの)Webサイトを訪れたことはありますか? 掲示板の書き込みを読んだことは?
CD:「時間がなくて直接にはまだなんだけど、いつもスタッフがプリントしたものを見せてくれる。そのことについては是非言っておきたいし、彼らに伝えてほしいんだけど、舞台を見に来てくれたファンのみんなの好意とサポートにはすごく感謝してる。みんながいるから僕たちはやっていけるんだ。そのことをとても大事に思ってるよ。ありがとう!」
補足:Diarmuid and Grainne(Grania)(ディルムッドとグラーニャ)の物語について。 by 熊谷さん
アイルランドの伝承神話は、1)ダーナ神族の神話(アイリッシュ・バンドの老舗、デ・ダナンの名はここから)、2)太陽神ルーフが人間に生ませた子、ク・ホリン(RD の第三場のイリアン・パイプスのソロを思い出してください)を中心とする赤枝の戦士団(Red Branch Champion )の英雄譚、3)コルマック・マックアート王の時代を舞台にしたダーナ神族の王ヌァダの子孫、フィン・マクヴァル率いるフィアナ(騎士団)の英雄譚、などがあります。
早くに妻(妖精サヴァ)を失ったフィン・マクヴァル、英雄として名は馳せたものの、老境にさしかかるとさびしくて仕方がありません。新しい妻をもらおうということになり、白羽の矢がたったのが、コルマック王の若く美しい娘、グラーニャ。ところが彼女、「英雄か何か知らんけど、なんでうちのお父ちゃんより年喰った奴と結婚せないかんの?」と、関西弁で少々ご立腹。浮かぬ顔で婚礼のパーティーに臨んだのですが、フィンのお供の中に、若くてかっこいい騎士を発見。
「あれは誰?」
「フィン様の一の家来、フィアナ騎士団の沖田総司こと、ディルムッド様でございます」
「きーめた。彼と駆け落ちしちゃおっと!」
てなことで、侍女に金の杯を用意させると、睡眠薬入りの酒を入れてディルムッド以外のフィアナ騎士団の面々に回し飲みさせ、眠らせてしまいます。渋るディルムッドを口説き落とし、まんまと逃げ出してしまいました。
翌朝目を覚ましたフィンとフィアナ騎士団は、当然激怒。「草の根分けても探し出せ!」ということになりました。かくて厳しい追跡が始まりました。二人はタラからリマリック、リマリックからクレア、そしてまたタラへと、何年にもわたってアイルランド中を逃げ回りますが、遂に捕らえられ、あわれディルムッドは命を落としてしまいます。悲しみに暮れるグラーニャでしたが、結局フィンとの結婚に同意し、彼の妻として余生を送りました。
いまでも、二人が逃亡中に寝起きしたという「ディルムッドとグラーニャのベッド」と呼ばれる石が各地に残っているそうです……。
この手の伝承の常として、話にはいくつものバリエーションがあります。ここでは、主として井村君枝さんの本を基本に、いくつかヴァージョンをまぜてDoDG の舞台を理解しやすいようにまとめました。言うまでもないでしょうが、ディルムッド役はコリン、グラーニャ役はジーンが務めています。
「もっと知りたい」という方は末尾の参考文献をあたってください。これ以外にも、最近の「ケルト・ブーム」のおかげで、各種の本が出ていますので、書店や図書館をあたってみてください。なお、人名表記は、井村さんに従いました。
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<参考文献>
- 井村君枝 著 『ケルトの神話』筑摩書房
- 井村君枝・文/天野喜文・絵 『ケルト・ファンタジー』波書房
- F・ディレイニー著 『ケルトの神話・伝説』創元社
- Y・ブレキリアン著 『ケルト神話の世界』中央公論社
- 三宅忠明著 『アイルランドの民話と伝説』大修館書店
英語でOKという方はこちらを↓
http://www.ncf.carleton.ca/~dc920/darmuid.html