西川紀代美のVagabond in Dublin!
『今年の6月に(山梨放送を)退社して7月からアイルランドに留学する事にしました。最低一年は行ってくるつもりです。わっはっは。行っちゃいますよー、10年来の憧れのかの地に・・・友達は「なんだってアイルランドなの?」って聞いています。「それは私の趣味だからさ!」 名付けて「西川紀代美2000年風来坊化計画 in Ireland!」』

と、いう言葉を残してふらりふらふら風来坊、ダブリンに行ってしまった西川紀代美さんからお手紙が届きました・・・。


Vagabond in Dublin:
1. マイケルの記録破られる!?
2. イニシュモア旅行記
3. Irish好み・言葉編
4. Vagabond in Scotland
5. PUBに行かなくちゃ!!!


Riverdance the Homecoming
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山梨放送 Goo! Morning
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■第4回:Vagabond in Scotland
Sat, 25 Nov 2000 12:56:02 GMT

【スコットランドに行きたい!!】

 子供の頃、弟が持っていた「世界ミステリー大百科」という本にスコットランドのネス湖に住むといわれている「ネッシー」が出ていた。「例の写真」のおかげで、雪男や宇宙人よりもネッシーは現実味があって、「いつかネッシーを捕まえてみようじゃないの」と子供心に意気込んでいた時期があった。

 やがて、ネッシー狙いのお転婆は少し大人になってから、メル・ギブソンの映画「Brave Heart」で、スコットランドの英雄の男気に号泣する。

 そんなこんなで、スコットランドにはアイルランドほどではないが日本にいる時から興味があった。(興味の出所がミーハー過ぎだけど)ダブリンに来て4ヶ月。まだまだこの国の初心者ではあるがだからこそ、アイリッシュの誰もが兄弟のように感じているナショナリティーに触れてみたくなった。ダブリン〜エジンバラまでは飛行機で1時間。「行ってみたいなぁ」っと思った時には往復チケットを予約していた。


【まずはめざせInverness】

 スコットランドの首都、エジンバラまでは本当にあっという間だった。着いて、まず驚いたのが、街の美しさ。建物の美しさはもちろんだが街路にはゴミがほとんどなく、街の中の緑もよく手入れされている。なにもかもが「きちんと」しているのだ。素晴らしい!でも、とにかく最初に目指すはネス湖近くの北の都市インヴァネスだ。街の中心駅「Waverley Station」に向かう。インヴァネスまではScotrail(特急)に乗って三時間半。往復で32スコティッシュ・ポンド。うぅ・・Expensiveだ。
エジンバラの夕景


 ちなみにスコットランドの物価ははっきり言って高い。アイリッシュ・ポンドは123円位に比べ、スコティシュ・ポンドは170円前後(2000年11月10日現在)しかも、表示されている金額はアイルランドの価格と同じかそれ以上。こんなに物価高の中で過ごすならとことん見て周ってやるぅ・・・と意欲も湧いてくるというもの??
エジンバラの街角で


 けたたましい発車ベルの音もなく、定刻通り列車は北に向かって静かに走り出しアイルランドによく似た緑の大地の中を駆け抜けて行った。


【宿探しで一苦労・・・】

 いよいよインヴァネスに着いたものの、もう日はとっぷりと暮れていて、ツーリスト・インファメーションも閉まっている。しょうがない、宿探しは自分でしようと地図を片手に歩き出した。やがて雨も降り出したというのに、自分の歩いて行った方向が悪かったのか、唯たんに暗さゆえに見過ごしていたのか30分以上歩いても、なかなか良さそうなところが見つからない。ふと、なんだって自分はこんな日本から離れた北の街でずぶぬれになっているんだろう・・・・と、とほほ・・・な感じがしてきた。
ネス川


 やがて、ネス川沿いにB&Bを発見。聞いてみたら、今晩と明晩、空き部屋ありという。1泊25ポンド(約4000円)は予算オーバーだが疲れ切っていた私には魅力だった。部屋に入ってみたら、ここは正解だったとわかった。清潔なバス・ルーム。フカフカのベッドのリネンからは石鹸の匂いがする。ポットと紅茶とコーヒーのセットがあり、テレビまである。疲れている人を温かく迎えます・・・・という心使いが主人や宿全体から伝わってくる。まずは、じっくりと熱いシャワーを浴びて疲れを癒した。

インヴァネスでの滞在先:
Larchfield House
15 Ness Bank Invarness
Scotland IV2 4SF
TEL: +44(0)1463 233874
FAX: +44(0)1463 711600
インヴァネス城を背に川沿いを流れと反対方向に歩いて行って、セント・アンドリュース大聖堂の川を挟んだほぼ向かいです。



【さぁ、ネス湖!!】

インヴァネスの朝


 目覚めは快調!まずは朝一番にツーリスト・インフォメーションに。何種類かネス湖を訪ねるバス・ツアーがそこから出ているので、内容を確認してそのうちの一つを選んで参加する事にした。ドイツ、オーストラリア、アメリカ、カナダ、コーチ(観光用のバン)の中はいろいろなナショナリティーでいっぱいだ。しばし、それぞれの国のネッシーのとらわれ方で盛りあがる。紅葉が美しいインヴァネスを、コーチはゆっくりと・・まるでもったいつけるかのようにネス湖に向かって走って行った。
ハイランド牛



【ネス湖だ!!!】

 鈍い色の湖が見えてきた。ネス湖は幅が1.6kmに対して、周囲が40kmという細長い湖。鏡のように湖面には周囲の紅葉が写っていた。多くの謎を内に秘めた湖は不気味なくらい静かに湖面を漂わせている。いかにも、ぬーっと何かが出てくるような雰囲気。
ネス湖


 「例の写真」発表以来、数多くの生物学者や冒険家がここを訪れ捕獲を試みている。氷河時代に出来た地形を今もほとんど残している高地の湖のほとりに立ち、彼らの夢とともに自分の子供の頃・・・・ベッドの中でひたすらネッシーを捕まえる計画を練っていた頃を思い出ながらゆっくりとその空気を吸いこんだ。
ネス湖畔にて



【スコティッシュ・マン】

 結局ネッシーには逢えなかったが、スコットランドの人々に出会えただけで、この旅の大きな収穫があったと思う。そのくらい、スコットランドの人々はステキだ。アイリッシュ達曰く「スコットランドの人はアイリッシュによく似ている」と口々にいった。確かに、イギリスから受けてきた迫害の歴史、文化、自然など人種を形成する環境はよく似ているが、まったく外からやってきた私にはその違いを感じ取れた。優しさが上品なのだ。もちろん、アイリッシュだってやさしい。でもそのやさしさに違いがある。例えば、道に迷って現地の人に尋ねたとしよう。

 アイリッシュは「なんだよー、道に迷っちまったのか?しょうがないなぁ、こう行ってああ行って、バーンと行けば着くからよ。もう、迷いなさんな、ほんじゃーな!!」スコティッシュは「どうなさった?迷ってしまったのだね、かわいそうに。こう行って、ああ行けば着きますから、もう心配はありませんよ。お気をつけて、お嬢さん」ちょっと、おおげさに口調の違いを表現すればこんな感じか。

 老若男女問わずに、目が合うと「にっこり」笑いかけてくれる。その笑顔には包容力がある。

 「スコットランドに行ってきたよ」とアイリッシュに言うと、まず言われるのが「スコットランドの人ってよかったでしょ?」って応え。うん、よかった。美しい街並み、どこからともなくいつも、流れてくるバグパイプの少し切ない音色、それにも増してスコットランドの人々を好きになった。たった週末だけの旅だったが、ダブリンに向かう飛行機に搭乗する前、「Brave Heart」のサントラなどを聞きながら、とっても寂しい、離れがたい気持ちがした。やがて、飛行機はエジンバラを発ち、すぐ一時間後にはよく似た緑の大地に降りて行った。



Written by Kiyomi Nishikawa
Designed by shibasaki
Produced by moriy (Air)
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