ビデオ・CD:The Riverdance Orchestra(1)
Riverdanceで初めて「アイルランド音楽」に接した方も多いと思います。
実の所あれは、作曲者ビル・ウィーラン Bill Whelan も語っているように、純粋なアイリッシュ・トラディショナル・ミュージックでもなんでもなく、途中で出てくるスパニッシュやロシア〜東欧音楽も含めて、彼が新たに独自の視点で作り上げた音楽(一例をあげると、『Firedance』では踊れない、とおっしゃったフラメンコ・ダンサーさんを知ってます)ですから、あれだけを聴いて「アイリッシュ」のイメージを作られても困ってしまうのですね(その辺は、ダンスについても同様ですよね)。
しかし同時に、The Riverdance Orchestra に参加しているミュージシャンには現在のアイリッシュ音楽シーンで重要なポジションを占める<スタープレイヤー>も多く、彼ら彼女らが出しているオリジナルアルバムには優れた作品が少なくありません。ビデオやステージを堪能し、サントラCDを愛聴しておられる方には、ぜひここから新しい音楽体験へと旅立っていかれることをおすすめします。
特に最近では、このオーケストラで知り合って意気投合したミュージシャンどうしが、新たにアルバムを作るという動きが幾つかみられるようになりました。まさしく、Riverdance が産み落とした貴重な財産のひとつであると言えます。
ここでは、そんな「Riverdance 以後」の作品をいくつかご紹介します。ブームにのって、アイリッシュ音楽関係のCD国内リリースも毎月コンスタントに出るようになりましたし、ほとんどが国内の普通のCD店で入手できるというのは、数年前までは考えられなかったことでした。おかげで財布が軽い軽い…
なお、ここでとりあげるミュージシャンは1999年の来日公演のメンバーを中心に、ダブリン公演/ニューヨーク公演のふたつのビデオの出演者にも少し触れますが、必ずしも現在も Riverdance に関わっている人たちばかりではないことをお断りしておきます。また国内盤CDの品切れ・絶版等については確認してません。輸入盤ならおそらく大半が入手可能だと思いますので、amazon.com などをチェックしてみてください。
「Riverdance 以前」の作品集としては、『ルーツ・オブ・リヴァーダンス』などいくつかが発売されていますが、私はむしろプロデュース&キーボードで参加した『EASTWIND』を挙げたいと思います。ダブリン公演版でイリアン・パイプスのソロを披露したディヴィ・スピラーンをはじめ、Nikola Parov、Noel Eccles、Mairtin O'Connor という、後にリヴァーダンスに関わることになる面々がこぞって参加しています。この作品は、アイリッシュのミュージシャンが東欧伝統音楽に正面から取り組んだ異色作で、モスクワ・フォーク・バレエ・カンパニーが出てくるシーンが好きな方にはおすすめできます。
ガドゥルカやカバルなど、見慣れない東ヨーロッパの伝統楽器を一手に引き受けているニコラ・パロフは、ブルガリアのマルチ・ミュージシャン。彼には、ハンガリーの歌姫シェベスティーン・マールタ Marta Sebeatyen (ちなみに『Marta's Dance』は、 Bill Whelan が彼女が踊るのを観て着想したそうな) と作った「Kismet」(邦題『運命』VACK-5290/1996年作品) なる名作もありますが、Riverdance がらみでいうと『KILIM』が重要作ですね。残念なことに、まだ邦盤は出てませんが。
Special Thanks に、ちゃんと Riverdance Orchestra の名前が出てきます。リヴァーダンス組からの参加ミュージシャンは、Noel Eccles、Mairtin O'Connor、Des Moore、Davy Spillane、Ken Edge (『Trading Taps』でサックスを吹いていた人)などなど。こちらも上記同様<東欧色>の濃いCDですので、アイリッシュ音楽を期待されて買われるとひっくりかえるおそれがあります(^_^;)。
1999年の来日公演プログラムではモーリン・ファヒという表記でしたが、モーリン・フェイとも書くようです。まあ、どっちでもいいことなんですけど。彼女は Reeltime というバンドで、現代的なアイリッシュ・ミュージックを聴かせてくれます。
Reeltime は現在までに2枚のアルバムをリリース、そのうちグループ名をアルバム・タイトルにしたデビュー盤はMSIから国内発売されています(GLCD 1154/1995年作品)。
セカンド・アルバムは『LIVE IT UP』。Riverdance 関係のゲスト参加者は Brendan Power、Declan Masterson、Georgi Petrov、Jimmy Higgins。楽しくてかっこいい一枚です。
さらに、Mairin Fahy のソロアルバムも出ています。
ソロの場面に弾いていたトラディショナル・ナンバー「Masons Apron」も収録している要チェック盤です。Brendan Power、Declan Masterson、そしてコーラス・グループ Maca (後述) が参加。
初来日公演では多くのファンの心をつかんだケイティ・マクマホン。 すでに Liffey co.からは抜けていますが、このアルバムがある限り、いつでも彼女に会えます。
プロデューサーにバゥロンの Jim Higgins を迎え、参加メンバーには Des Moore、Brian O'Brien 、Cathal Synnott ( Lagan Co. の音楽監督/キーボード) などの名前が見られます。このアルバムで嬉しいのはなんといっても「Heartland」が聴けることでしょう。彼女自身大切にしている歌のひとつのようです。
なお、ケイティ嬢はエクトル・ザズー Hector Zazou 「ライツ・イン・ザ・ダーク」(ワーナー/WPCR 5579) にも参加し、数曲歌っています。ケイティ・ファンはこちらもどうぞ。
1999年公演で来日したシンガーのなかで、Caron Hannigan、 Peter Harney、Tara O'Beirne、Yvonne Woods の4人が Maca というグループを結成、アルバムも出しています。
Brendan Power が1曲参加してますが、このアルバムはむしろ4人の美しいハーモニーを存分に生かした、シンプルな音づくりを楽しむものでしょうね。アルバムを手にした方は、ジャケット中面の「Thanks to」にご注目。Brendan de Gallai ほかおなじみの面々の名前があります。
それから、Morgan Crowley もソロ・アルバム「Out of Blue」を出していますが、これについてはM.さんのこちらをどうぞ。
以下はGingerさんのフォローです。感謝!
とんがりやまさんが,肝心な人をお忘れですので不肖私メが補充させていただきます。
一見,巨大なでんでん太鼓にしか見えない一面太鼓=バウロンを魔法のように操り,Mairin“紫のフィドル”Fahyさんと一騎打ちで会場を沸かせていたのが,現在アイルランド随一のバウロン奏者ジョニー“リンゴ”マクドナーです。
かつてはドロレス・キ(ケ)ーンやメアリー・ブラックら数々の名ボーカリストを育てたアイリッシュ伝統音楽の屋台骨バンドDe Dannan(デ・ダナン)の中心メンバーであり,現在は Arcady(アーカディ)というバンドのリーダーです。
セカンドにあたります。ピアノやチェロも入り,落ち着いたボーカルも含めてアイルランドの伝統音楽の最良の部分をすくい取ったアルバムです。(勿論リヴァーダンスのような音楽を期待されるとちょっとこけることになりますが。^_^;)
CDが手に入ったら低音を思いきり上げてみてください。バウロンの表現力の豊かさに驚かれることでしょう。
De Dannan も数枚日本盤が出ていますので,伝統音楽に興味を持たれた方はご一聴ください。
March/2000▼△とんがりやま▽▲