すべてはこの日のために、っていうとちょっと大げさではあるけれど、moriy的には過去3年ちかく引っぱってきたものがいま目の前で展開されようとしてるわけで、ほんとうにもう、この場の空気感は一生忘れまいという、意気込みなんです。
開場の20分前くらいに東京国際フォーラムにつく。例のお花はちゃんとTokikoさんのところに届いてるんだろうか、てなことを思いながらAホール入り口へ向かう。
「おにいちゃん、チケットある? なに見に来たの?」
「どう、チケットあるよ?」
あれ、こんなにダフ屋さんがでるほど人気あるのかな。
「Riverdanceですけど。チケットは持ってるんで」
「え? なに、ダンス?」
うなづく。
「なんかやってるの、へえ、あっち?」
なんだ。別のホールのコンサートのダフ屋か。
入り口につくと、受付も準備中。当日券でたのかな。
お客さんとおぼしき人は40人ほど。あと、関係者らしき人たち。ビデオ回してる人もいる。何の資料にするんだろ?
でっかいお花の類もちらほら。こういうのを出せるのは主催者関係の大きな会社。
6時を少しまわって開場。
まずは早めにグッズ売場へ。CDは最近でた日本版サントラだけ。あれ、ケイティさんのとかも売ると思ってたのに。もったいない。
ついでに言えばここで「Celtic Feet」とハードシューズ並べれば売れると思うんだけどなあ。いまさら言っても何だけど。
会場の準備が長引いてるらしくて、すぐにはホールに入れない。
ロビーでネスカフェカプチーノを配っているおねーさんたち。その微笑みといい、立ち居振る舞いといい、お代わりの勧め方といい、かなり行き届いている印象を受ける(トラブル時の対応もいい)。ネスカフェ専属? まさかね。
いつのまにかホールが開いている。席を確認してパンフ類を置き、客席前の方に行ってみる。下手側のオーケストラピット(?)にはすでに楽器が並んでいる。イリアンパイプスやアコーディオンが目の前すぐそこに。
スタッフのお兄ちゃんの視線。大丈夫、さわりゃしないって。
次はとーぜん床のチェック。
象牙色の板が敷いてある。よくあるゴムっぽい素材ではなく塩ビのプレートみたい。断面が見えないのでクッション、もしくは音響上の対策をしてあるのかどうかわからない(あとで聞いたらやっぱり固いんですって。相当疲れるらしいです)。ステージ中央から等距離で順番に、番号を振ったテープ(蛍光?)が貼ってある。
コンコンとノックしてみる。またスタッフのお兄ちゃんの視線。だから、さわったくらいじゃどうにもならないって。
上手側のカメラ席には10台くらいの三脚。いい写真撮ってね。
席に戻る。
と、「AIR」のフレームの眼鏡をかけた長身の男性が声をかけてくる。
「森さんですか?」
「はい」
「桝田です」
「!!」
あわわわ、お父さま、東京来てらしたんですか。
次第にざわつきが大きくなる。1階席の前の方で名刺交換をする人たち。う、いかにも関係者。盛り上がりが不安だなあ。
バンドのメンバーが出てくる。小さいけど長い拍手。暗くなる客席。
スクリーンには「Riverdance a journey」の文字。え、「the Show」じゃないの!?
- Corona
- 静かに始まるAir。男声ナレーションは、当然といえば当然なんだけど、日本語。NY版ビデオと声のトーンが似ているので、なんとなく頭の中で同時通訳してしまう。
ビデオでいえばNYの夜景が流れている間に、ダンサーが両袖から1歩、1歩進んでくる。そして彼らは定位置につき、トゥの音を響かせ、頭をうつむかせる。
Reel around the Sun
- フィドルの音が加わる。見ているこちらの脈拍が上がる。
そして、静まり返った中で一気に振り下ろす片足の4連。
何度となく繰り返して見たあのシーンが、あの音が目の前で鳴っている。カメラもブラウン管もなく、ただ空気を通してそれは伝わってくる。
無表情で、この上なくセクシーなダンサーの列が円を作り、回り始める。
ハードシューズの作り出す打撃音のテンポが上がる。
あふれる閃光の中から、来た! Breandan de Gallai!
Michael Flatleyの熱く、しつこいほどの自信にあふれたスタイルでもなく、Colin Dunneの引いて構えるスタイルでもなく。舞台の対角線上を猛スピードで突っ走るその姿は、客席を意識するより、自分自身が音楽の一部であることを純粋に楽しんでいるように見える。舞台上のフェロモンの質としては、Michaelがオスっぽく、Colinがニキビっぽいのに対して、Breandanさんはあくまでさわやか(ああ、相変わらずわからん比喩だ)。
ビデオやCDで聞き慣れた曲に対して、テンポがやたら速いように感じる。ステップのシャープな流れ! 単にスピードだけ言えばMichaelオジさんよりよっぽど上なんじゃないだろうか(年齢差はもちろんあるのだけれど)。
The Hearts Cry
- Kayさんの声。NY版ビデオのKatieさんの声がクリスタルガラスだとすれば、Kayさんは目の細かいヤスリで仕上げた針葉樹の感触。
曲の終わり、コーラスの各人が持っていたロウソクを手で消す演出、好きです。
Women of Ireland
- 上手側から登場するソフトシューズの列の先頭に、黒髪のショートの女性が一人・・・ああっ、Tokikoさま!(翌日のサンケイスポーツでは一番手前(カメラの真ん前)で写ってました。エラいぞサンスポ!!)
そしてJoanneさま登場。例のコウモリマント、Jeanさまは黒子にはずさせてましたけど、Joanneさんは自分で床に落とし、階段を降りてきます。
ロシアンフォークバレエの面々と対決するシーン、思いっきり蹴り上げるフロントクリックになってます。Feet
of Flamesでもそうでしたが、やっぱりこの方がわかりやすいですね。
Caoineadh Cu Chulaine
- なんというべきか、Declan Mastersonさんのスタイルは、東北系の演歌っぽいです。下から持ち上げる音の装飾部分が、長い。「あぁ〜」ではなく、「ん、あ〜」って感じ。聴いた人ならわかるよね。
Thunderstorm
- これだ! 珠玉の名作アカペラタップ!!
でも冒頭のフラッシュがなんか遅かった(暗闇の時間が長かった)ような気がする。
Shivna
- 謎だったShivna、いいですねえ。舞台上手にコーラスが位置し、階段の上(女性ダンサー)と下手側(男性ダンサー)で作品が進行する。
曲はいかにもAnuna、という印象。作ったのはBill Whelanさんなんですが。
Firedance
- もういうことなし。出てくるだけですべてオッケーです。Mariaさま。
後半アイリッシュステップ男性陣6人との対決。Mariaさんの存在感が際立ちます。
Slip into Spring
- バンドの面々の出番です。フィドルのMairinさん、横滑りステップがポイントです。これも見た人はわかる(^_^)。
Riverdance
- 言うことないです。わたし、7拍子のあたりから意識なくなってました。休憩時間は放心状態。パンフレットの袋を開ける耳障りな音が聴こえる。
American Wake 〜 Heal their Hearts 〜 Freedom
- みんな、拍手しようよ!
盛り上げようよ、ねえ!!
どうもステージが狭いらしく、大きく輪になったりするのが大変みたい。
Trading Taps
- NY版と違い、タップダンサーは3人。割とわかりやすい音を聴かせてくれます。「あれなら俺でも出来る」という声も聞こえるんですが、それをいったらTAP DOGSだって何だって・・・(^_^;)。
おちゃめなWalterさんが途中、おっとっと・・・と舞台から落っこちそうな振りをするんですが、もしかして、「ステージ狭いじゃねーか」っていうアピールなのかなあ・・・。
この曲から急に客席の受けが良くなります。わかりやすいことはいいことだ。
Morning in Macedonia(The Russian Dervish)
- この曲もいままで謎でしたが、いい感じです(客席では「なんでいきなり東ヨーロッパとかロシアになるの?」というひそひそ声がありましたが)。バウロンの音程が変わるところで拍手がおきました。
つづいてフォークバレエの大熱演。NARUSEさんも書いてらっしゃいましたが、変拍子部分は拍手がしにくいみたいですね。後半からラストにかけて、ダンサー側で拍手してるのに合わせるようになりましたが、その勢いがコンスタントに続くと、「これは!」という見せ場にさらにいっそう大きな(もしくはテンポを無視した)拍手を送るのがむずかしい。
ダンサーのみなさま、われわれホントーに感動してたんですよ、義理の拍手じゃないです、絶対。
Oscail an Doras
- これもやったらテンポが速いような気がしたなあ。女性陣のハードシューズ、あんなに速く細かく音が出るのか・・・(絶句)。
Heartbeat of the World
- 「世界の、鼓動。」うるさいって。
ここでもMariaさま圧巻です。
Heartland 〜 Riverdance International
- すいません、このあたりからもう意識ないです。
Kayさんの歌声に気が遠くなり、ランベグ vs Breandanさんの超高速ステップを呆然と眺め、ステージ後方の幕が開いてDance
troupeのアカペラが始まり・・・。
すでに体にしみついた一つ一つの音、さらに言えばその奥にあるプリミティブなリズム(それこそ、鼓動)までが、ステージからつたわる振動で呼び起こされ、揺り動かされていく。
エンディング
- 拍手と、歓声。スタンディングオベイション。
・・・客席が明るくなる。扉に向かって流れていく人波。
上がった脈拍が、まだおさまらない。
Riverdance 1999トップへ
|