Ragus2006:7/15夜:Ragusは全国ツアーをするべきだ

Jul. 15 2006
posted by moriy
ラグースは実物を見て判断するべき理由

いや、いい。いいですよRagus。というか、今晩の舞台を見て、なんか申し訳ない気持ちでいっぱいです。正直すまなかった。

事前にビデオは入手して、すでに観ているんですよ。でも、個人的にこのビデオの出来があまり好きではなくて、いつもなら公演前にレポートを出すべきところ、いっさい触れずに来ていたのです。日本公演前にネガティブな言葉で表現してしまいそうで、このサイトを読んでいる人たちの先入観になってしまうのが怖かったもので。

この判断は正解でした。ほかにビデオを先に見ていて、「こんなもんか」と思ってたみなさん、生は違いますよ。生を観るべきです。いいんですよRagus。日本ツアーも終盤になってこんなことを言っているのもなんですが、もう1回観たいと思いますもん。しまった。もっと早くから騒ぐべきであった・・・と。

7月15日、新宿文化センターの夜の部。開場時間になって、入り口に長蛇の列。客層がよくわからない。アイリッシュ好き云々という感じでもなく、年齢層は少し高め。そういえばTakaさんがいらしてましたね。

自分は6列目というけっこう舞台に近い席。傾斜も適度にあって非常に見やすい位置でしたが、後ろの方や2階ではどうだったんでしょう。

幕が開くと奥にミュージシャンが5名。パイプ、フィドル、アコーディオン、キーボード、ギター。手前側はダンサーのスペース。2部構成で約2時間。ダンサーやミュージシャンの表情がわかる距離で観られました。

ビデオではちょっと退屈な印象だったRagusですが、予想を覆してかなりよかったです。ほかの会場がどうだったかわかりませんが、照明もかなり作ってありましたし、全体の進行のテンポもいい。客席のノリはかなり心配でしたが、特に第2部は大拍手の連続。今回のステージをビデオ化して売って欲しいくらい。

何がいいのか

ショーの構成とか細かいところは、パンフレット(1000円)の大島豊さんの解説その他に譲って、思いついたポイントを書くと、「ダンスショーじゃなく、コンサートなのです」ということにつきます。

大島豊さんが「『リヴァーダンス』に対抗できる唯一の存在」とパンフレットに書いていらっしゃいますが、これもダンスと音楽をどうとらえるかによるので、まったく同列には考えない方がいいです。リバーダンスと違うニッチを攻めているからこそ、このショーは成功しているわけですし。

ショーの構成として、生演奏があり、ダンスがあり、ダンス中心の曲もあれば、楽器中心の曲もある。その意味ではリバーダンスと同じなんですが、全体を通すわかりやすい世界観などは提示されませんし、ダンサーの存在感もそれほど大きくありません(たとえばマイケル・フラットレーやジーン・バトラーのような)。オープニングこそイリアンパイプスで始まり、板付きの女性ダンサーが肩を回したりしますけれど、ほとんどの曲は耳慣れたトラッドの名曲で、そのメドレーの中でダンサーが登場してはけていくという流れになっています。

たとえていうなら「チーフタンズ(Chieftains)のコンサートのダンス拡大版」なのです。チーフタンズではだいたい2名くらいのダンサーがちょこっと出ては消えていきますが(参考:The Chieftains 『AN IRISH EVENING』レポート)、Ragusでは女性プリンシパル1名、男性3名、その他女性6名という大所帯で見せてくれます。

大所帯とはいっても、打撃音は足パクではなく、生音をマイクで拾ってます。振り付けも、特に前半は地味目です(女性プリンシパルGeraldineさんのハードシューズのステップには目を見張りましたが)。音楽的にはhornpipeがちょっとスイングしていたり、環境音楽的なシンセ音を多用したり、Chieftainsともちょっと違う。

チーフテンズもリバーダンスもRagusもすべて同じカテゴリに入れる考え方もあると思うのです。すなわち、「音楽のための音楽」「ダンスのためのダンス」ではなく、「音楽としてのダンス」「ダンスのための音楽」が成り立っているという意味で。おそらく大島センセがいいたいのは、これが成り立っている作品である、という意味で「対抗できる」ということなのではないかと。

で、ダンサーの打撃音はあくまで音楽の一部という枠をはずれないのです。第2部になると男性陣のハードシューズがかなり活躍するんですが、それでも見た目の派手さよりも音楽的であることに重きを置いている感じなんですよ。ダンサーもミュージシャン(パーカッショニスト)だ、という感じ。ここで生音であることが効いているんです。

ダンサーは楽しいと思いますよ。アイリッシュでは「音に合わせて踊る」というのがショーダンスの宿命のようになってますが、Ragusでは「音楽の一部になれる」わけですから。

ホント、今回の公演が関東中心というのは実にもったいない。全国回るべきですよ。せめて大阪には行くべきだと思います。

もうひとこと。

イリアンパイプスのソロが面白いです。前半の後ろの方ですが、こう、両手の指はメロディを弾きつつ、右手のひじはふいごを操作し、左手のひじは袋を押さえている、というのはよく見る光景ですけれど、このMikie Smythさんのソロではさらに右手首あたりで別の所を押さえて、動きのある和音を個別に出してくるんです。どういう手首の使い方をしているのかよくわからないんですが、ああいう弾き方は初めて見ました。

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