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エーデン・ヴォーハンもやって来た!!


毎度おなじみとんがりやまさんの緊急投稿です。いつもありがとうございます!


 あのエーデン・ヴォーハン Aidan Vaughan に、ついに会えました!
 「…って、誰?」という方は、とりあえず山下理恵子さんの『アイルランドでダンスに夢中』をお読みください。山下さんによると「種も仕掛けもないエーデンのステップはぜひ見て、聞いてほしい」( 同書p.78 ) とのことですが、「んなものアイルランドまで行かなきゃ見られないよう」と遠い極東の島国で泣いていたら、なんと彼の方からこちらにやって来てくれたのでした。しかも、今回の来日の目的は私の地元・京都でのコンサートのみ。うーん、贅沢。こんなチャンスを逃す手はありませぬ。

 5月いっぱい、京都市内のあちこちで行われたイベント『芸術祭典・京』( 今年で10回目を数えるという ) の<音楽・舞踏部門>のひとつとして「アイルランドのケルト音楽と踊り」を紹介しようという企画。その昔、太閤豊臣秀吉が花見をしたので有名になり、今では世界文化遺産のひとつにも指定されている、醍醐寺という風光明媚なお寺の境内の、小さなお堂がステージです。5月12日(金)と13日(土)の両日あったコンサートのうち、13日の回を観てきました。出演は守安 功・雅子夫妻をメインに、イリアン・パイプスのブライアン・マクナマラ Brian MacNamara とエーデンがアイルランドから。そして東京からダンス陣として宮本 豪、松井 綾、坂内 美穂 (キーボードも)、丸田 智子の各氏が参加、という贅沢な布陣です。
 1時間強という短いコンサートではありましたが、内容は濃いのなんの。守安さんの軽妙なおしゃべりに爆笑し、ブライアンのパイプスはじめ名演奏にうっとり聴き惚れ、そしてなんといっても華麗に繰り広げられる様々なタイプのアイリッシュ・ダンス。5月の新緑の中っていう爽やかなシチュエーションも、絶妙にいいんですよね。

 で、注目のダンス。内容は、エーデンを含む4人でハーフセットを組んでのセット・ダンス ( カレドニアン・セットとプレーン・セットからの抜粋 )、オールド・スタイルのステップ・ダンスを2種類 ( クレア・スタイル/坂内さん、コーク・スタイル/丸田さん )、ソフト・シューズのモダン・ステップ( 松井さん )、それからエーデンの十八番・セット・ダンスでのバタリング・ステップを応用・発展させたソロ・ダンス ( 宮本さん、エーデンさん ) …。イベントの企画に合わせた啓蒙的プログラムのおかげで、これだけ様々なタイプのアイリッシュ・ダンスを一度に観られたのは、大変ありがたかったです。
 どのダンスも、アイルランドの普通の人たちの生活により密着したもので、凝った衣装と派手な演出によるスケールの大きなステージングがウリの、<イマ風アイリッシュ・ダンス・ショー>とはおよそ対極にあると言えそうですが、だからといって地味なものなどでは決してありません。例えば、セットダンスでのバタリングの妙技は、音楽のもつリズムやグルーヴをより効果的に印象づけて、観るものをじわじわと興奮させます。これもまた「フット・パーカッション」としか言いようのない独自の世界なのであって、ハード・シューズのモダン・ステップを見慣れた人にとっても、新鮮な驚きを与えてくれることは間違いないでしょう。

 先月、大阪と京都で宇川彩子さんを観たときに、「ああ、私はこういうのが観たかったんだな」と痛感したんですが、そのごく基本的なポイントとして、
(1) 音楽とダンスの比重が同じ
(2) 当然、どちらもナマ実演
のふたつを挙げたいと思います。あらかじめ録音された曲をバックに、あらかじめ決められた通りに踊るたぐいのダンスは、たとえどんなに凄いテクニックを披露してくれたとしても、観ていてあまり面白くないんですよね。音楽がダンスを誘発し、ダンスが音楽を挑発する、そんな緊密な関係性にこそ、私は胸をときめかせたい。

 その点、今回のコンサートも素晴らしかった。エーデンさんって ( 山下さんの本にも写真が載ってますが ) ダンサー体型でもなんでもない、ごく普通のおっちゃんなんですよねえ。それが、ひとたび踊り始めると、周りの空気を一変させるほどの静かな迫力を発します。
 なにより、靴音がこんなに豊かに優しく<語りかける>ものだとは、これまで思ってもみませんでした。上半身の振付というものがない ( といってもいわゆる直立不動でもない。ごく自然に、余分な力を抜いているだけのように見えます ) シンプルなソロ・ダンスなのに、なんだかエーデンさんの人となりがみんな分かってしまうような、表現力の圧倒的な豊かさに心打たれました。よくある言い回しを使ってしまえば<存在感>のひとことに尽きるのかも知れませんが、共演者と、そして観客をもあたたかく包み込んでしまうエーデン・ヴォーハンのステップに、私はすっかり魅了されてしまったのでした。

 圧巻だったのは、宮本さんのソロを引き継いでエーデンさんがソロを取るシーン。片足を軸に、もう片方の足を細かくステップを踏みながら一周し、軸足を変えて反対方向へまた一周するという「すごワザ」を披露してくれたんですが、そのなんと素早くて、しかも精確なこと。
 で、いつの間にか背後に他のダンサーが並んでいて、曲が途切れないまま流れるようにセット・ダンスに入る、その滑らかで鮮やかなことと言ったら!
 コンサート自体の構成も実によく考えられた、充実したステージでした。


【INFORMATION】
●エーデン・ヴォーハンは、この秋にも来日します。
2000年10月28日(土)PM5:00〜
2000年10月29日(日)AM11:00〜/PM2:00〜/PM5:00〜
出演守安 功、守安 雅子、エーデン・ヴォーハン(特別ゲスト)
料金前売り3,500円・当日4,000円
場所古楽の小屋 ロバハウス (立川市幸町6-22-32)
多摩モノレール・西武線玉川上水駅下車徒歩6分
問合せ電話:042-536-7266・ファックス:536-7968


2000.MAY △▼とんがりやま▲▽


以前五反田のパブで、同じように守安夫妻およびそのほかのダンサーの方々といっしょにやってらしたエーデンさんを見に行ったことがあります。あんまりパタパタ鳴るのでダンスの終わったあと「靴底どうなってるんですか?」って見せてもらいましたが、ただの革靴でした。「自分はタップやってて云々」と言ったら、タップとアイリッシュの関係について親切にいろいろと話してくれました。ああいうさりげなくスゴいおじさんになれたら、いいですよねえ・・・。



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