RD2008:6/22夜:

みれーぬさんの名古屋千秋楽レポートです。
Jul. 27 2008
posted by みれーぬ

名古屋公演6/22(日)17:00〜

 泣いても笑っても最終公演のソワレ。席は左サイドの3列目(実質2列目)です。脇に通路の隙間があるので、前列の人の頭を気にせず、舞台まで容易に見通せます。

 プリンシパルは、Siobhanさん(名古屋公演3回目) & Jasonさん(2回目)。皆さんに人気のJasonさんの顔、カラダ、足技を堪能できる場所まで、ようやく近付けました。(先日の4階席はさすがに遠かった…)

 オープニングの「Reel …」。縦笛のMattさんは、こちらに背を向けて立ってらっしゃるので、毎回「今日はパク? それともナマ?」が気になってしまいます。指づかいを隠す意図ではなく、夜明けを迎える前の静寂の演出なのでしょうけど。

 以前の来日公演では、ダンサーさんたちが「唸り声」とも言える掛け声とともにステップを始めていましたが(これ、結構好きでした。いかにも「ナマ」っていう躍動感があって。体育会系のノリかな?(笑))、今回は掛け声少なめの演出ですね。

 ややオーバーな録音ステップ音とともに円陣が解け、ダンサーさんたちが去った後、閃光とともに現れました! Jasonさん! 大きい!!!

 胸板が厚い上に身を反らすように肩を張っているので、上半身にボリュームがあります。肝心の足(ステップ)は、ダダンッ、ダダンッ、と重く、Alanさんの柔らかさ&しなやかさとは対局、Joeさんの切れ味をさらに重くした感じです。

 ヘアスタイルは、ウェットムースかグリースの手櫛で掻き上げたように逆立っています。群舞の時には全く別のヘアスタイルでしょうから、どこに立ってらっしゃいるか見つけられなかったかも。

 テープ進行なのに、いつもより早く、あっという間にJasonさん登場の1曲目が終わってしまいました。Joeさんの「ガックリ」とは違って、肩を厳つく張ったまま大股で退場していきます。

 「The Heart's ….」は、Hayleyさんの歌声と美貌に酔い痴れます。音響トラブルのあった日の記憶が脳裏をよぎりますが、今日は「ひと言ひと言」が美しく響き渡るのを確かめながら聴き入ります。これまで登場したソリストに比べトーンが低くて違和感がある、との感想を述べておられる方もいらっしゃいますが、私はこのくらいの「語りかける」ような音程の方が、歌詞が聴き取りやすく心地よく感じました。

 「…Catheleen」では、歴代プリンシパル・トップの美貌(=踊ってらっしゃる姿が、ですよ)を誇る、Siobhanさんとの再会です。この方こそ、群舞の時にはどこに立ってらっしゃるか全く分からない(気が付かない)変身ぶりです。踊りの大きさ、表情ともに、プリンシパルであることを誇らしげに演じきっています。Donnaさん、Carlaさんがともに小柄ゆえに、一生懸命にプリンシパルのスケールの大きさを上半身をフルに使って演じているのに比べ、Siobhanさんはちょっと肩をすくめるだけで「表情」が生まれます。

 そういえば初日の公演で、衣装のスカートの裾に赤い糸がほつれて出ていました。今日もソフトシューズで登場した前半に赤い糸が見えましたが、ハードシューズに履き替えてからは直っていました。(くれぐれも、そこばっかり見ていたわけではありませんから)

 伯爵夫人&侍女たちが階段から降りてくるステップ音の過剰な音量には最後まで馴染めませんでした。ドラム演奏で補ってはいるものの、録音のステップ音が大きすぎますって。

 ああ、私もSiobohanさんにあんな風に蹴り上げられたい…と思いつつ、「お見事っ!」の拍手を送ります。

 そして、何度聴いても「窮屈」な感じの「…Chu’ Chulainn」の演奏です。折角のナマ演奏なので、毎回少しずつ変化をつけてらっしゃるのしょうが、凝れば凝るほど、テープ進行の伴奏に遅れそうで、聴いているこちらがヒヤヒヤします。この会場は音響(響き)が素晴らしいので、もっともっと余韻を残すような音色を聴かせてくれそうな、惜しい気がしました。

 「Thunderstorm」はライティングが気になって、DVDで以前の公演を見直しましたが、やはり最初は正面からの(顔が見えるような)フラッシュ照明はなく、雷鳴とともにシルエットだけを映し、階段から降りる直前にようやく「日が射して」くるような演出でした。顔が見えてなぜいけないか、というと、「あ、Joeさんがいる」とか気になっちゃうでしょ(笑)。

 レザー・ウェアに着替えたJasonさんは、黒い入道雲のように現れ、幾筋もの雷鳴とともに雄叫びを残し、そしてふっと笑顔に変わって客席のあちこちにアイコンタクトを送りながら去っていきました。

 バレエ演目の「Shivna」は、これまでは難解なところもありましたが、今回の3組のお名前を掲示板のみなさんに教えていただいたおかげで、それそれ違った振り付けをしていることに気が付くようになり、楽しめる演目に加わりました。

 今回の公演メンバーでは、妻が「ダニラ、きゃ〜」になってしまい(笑)、今日のマチネで再び彼の切れ&スピードのある踊りを観ることが出来、大満足していました。ソワレでは、長身のアンドレイさんが「優雅」に踊られていました。

 反対に、Rocioさんが踊る「Firedance」は、録音テープ進行のためでしょうか、日々のテンションの違いが分かりませんでした。(常に最高潮、ということ?) 客席にアイコンタクトを送るようなことをせず、客席の後方一点をにらみ据えて踊る気迫は、今日も変わりません。

 Patくんのソロ演奏が見せ場の「The Harvest」が、私にとっては第1幕のヤマ場かもしれません(笑)。マチネは右サイドだったけど、ソワレではこっち。ハイポジションで手拍子を送る私たちに、「いたいた」とアイコンタクトを送ってくれます。後半でも、真っ先に手拍子送るからね〜。

 いよいよ「Riverdance」を迎えると、私たちにしてみれば盛り上がるというより、ああ、終わってしまう…という寂しい気持ちの方が高まります。そう、今日が終わってしまうと、明日はないのです。この曲が、ここに至るひとつひとつの演目が、第1幕の終わりではなく「最後の1回」であったことに、今さらながらに気付きます。ああ、終わらないで!

 今からでも立ち上がってしまいたい、でもそれは最後であることを体現することにもなります。複雑な感情でボロボロになりながら、精一杯の手拍子を送っていました。

 第2幕最初の「Amercan …」では、いつものパターンなら、プリンシパルを務めない日のJoeさんが目の前(舞台左袖)に立つハズです。感傷に浸ってサボってはいられません。 Patくんの第一音のBowと同時に手拍子を始めます。

 農民風衣装で登場のプリンシパルのおふたり。地味な衣装のはずなのに、オーラを発するかのような鮮やかなターンで回っています。Joeさんと組んでいた初日、2日目からかなり日が経っているので、Siobhanさんってこんなに美しかったんだ…と見惚れます。

 Heyleyさんがひとりで歌う「Lift …」には慣れました。自分が彼女の傍らにいるような気持ちにもなれるので、「規模縮小」とは感じなくなりました。ただ惜しむらくは、この歌(歌詞)に対して、観客の側から何らかの反応(アクション)を起こせたらもっといいのに…とずっと思っています。両手を挙げて、翼のように揺らす(ウェーブ)とか、いかがでしょう?

 続いて「Heal …」を歌うMarkさん。この会場の音の響きを自分でも堪能するかのように、前へ前へと身を乗り出しています。4階席で聴いても、何の遜色もないはずです。たった1曲の出演では惜しい声量の持ち主ですし、もっと演技させてあげたかった…。

 DVD(CD)で見る(聴く)ことができるブロードウェー版のゴスペル・コーラス団でのアレンジは、何だかブロードウェー慣れしている観客に媚びているようであまり好きではありません。Moscow Folk Balletのみなさんや、Rocioさん(この場面のためにわざわざ専用の黒い衣装に着替えて)が出演している「移民の国」の象徴の演出が、私の中ではいちばんしっくりきます。

 「Trading Taps」は、Jason v.s. Jasonの競演!となりました。応援の掛け声を掛けにくいったら…(笑)。アイリッシュ団をリードして討って出るJasonくんを、Joeさんが後方から温かく見守っているように感じ、ほのぼのとした気持ちになりました。名古屋での大トリということもあってか、Jasonくん飛ばしてくれるのは、目の前で見ている分には迫力あって大満足!でしたが、構成的には原点に戻って、お互いの技を真似る&冷やかし合う「競演」の方がキレイにまとまっていて、懐かしく思えます。

 「The Russian …」に入る前のホイッスル演奏「Macedonian …」では、毎回最後の一音にエコーを掛けていましたが、それが何ともわざとらしくて、「え?今日も指パクだったの???」とあらぬ疑いを抱いてしまいます。

 そして「The Russian …」では、途中の変調にも負けずに手拍子を続けます。私たちの目の前、舞台左袖に立ったユリヤさんは、1階席のみなさんがちゃんと手拍子してくれているのを確認するとニッコリして、2階、3階席の方を見上げてさらに手拍子を誘います。

 ここからが大変。「Oscail …」もドラムの音とともに、手拍子で女性ダンサーのみなさんを迎え入れます。この演目が「Ri-Ra」と呼ばれていた頃から、大好きな大好きな演目のひとつです。「American …」の地味な農民風衣装から、このカラフルでチャーミングな衣装に大変身。ステップも陽気なリズムに。惜しむらくは、演奏&コーラスのほとんどが録音なことと、Moscow Ballet男性陣によるボディー・ドラムの演出が省かれていること…。マウス・ミュージックを務めるダンサーも、インカムは付けているもののおそらくダミー。いろいろと「合理化」されてしまってはいるものの外すことの出来ない楽しい演目です。Siobhanさんがソロを魅せる間だけは、手拍子を休んでステップ音に聴き惚れます。カクッと空く間合いの無音さえカッコイイ!

 そしてもうひとりのヒロイン、Rocioさんの「Andalicia」。つくづく、今回はギターの生演奏でないのが残念でした。「フラメンコって、ひとりでも踊れるからカッコイイ」は妻の談。そうですね、Maria姐のオリジナルとは随分スタイルが変わってきていますが、舞台を独り占めできる圧倒的な存在感が、あんなに小柄でチャーミングなRocioさんからもヒシヒシと伝わってきます。踊り出すと別人…というのは、このことを言うんでしょう。

 Patくんの「Slow Air & Tunes」。今回ばかりは手拍子をミスれません。聴いているこちらが緊張して動機が高鳴ります。今日はPatくんが目の前にいるので、掛け声の「ヨッ」を聴き漏らすハズもなく、1拍置いて手拍子を入れます。

 バウロンのソロを演じるGuyさんは、会場から手拍子が入るとうれしそうな、でも恥ずかしそうな表情を見せてくれるのが印象的でした。会場もノってるんだから、もっと魅せてよ(聴かせてよ)…という物足りなさが残ります。今回のバンド・メンバーはどなたも、強烈な個性というか自己主張される方がいなくて、少々寂しかった気がします。

 そんな感傷を吹っ飛ばす勢いで後半Patくんが飛び出し、満場の手拍子&拍手で締めくくってくれました。

 その拍手が鳴り止む間もなく、「Home and …」のイントロが(非情にも)始まります。コーラス部が録音音源であっても、これが今回のRiverdanceだと、ありのままを受け容れます。 Hayleyさん、ソロでCD出してないかな…。

 そしてフィナーレ。SiobhanさんとJasonさんが黒い衣装に着替えて颯爽と現れ、長身のおふたりがさらに迫力を増して見えます。おふたりとも、本当に丁寧に、会場のあちこちにアイコンタクトを送ってくれます。そしてとても楽しそう&うれしそうに、いい表情で踊っているのが、「ラスト・ダンス」を観ている私たちの心をシアワセで満たしてくれます。

 Jasonさんの「ドラム対決」は、足下が見えず残念…と思っている間に、意外にあっさりと終わってしまいました。昨日のJoeさんは、明らかに(名古屋公演での最後のプリンシパルを意識してか)いつもより「引っ張って」いたのですが。そのJoeさんの、叩き付けるようなステップはBrendan似かな、と思う一方、Jasonさんのステップは重量感がありながらも、M. Flatleyを尊敬しているようで、メロディ(音楽性)を意識したようなところが感じられました。

 Jasonさんのソロを堪能し損ねた物足りなさも、フル・キャストのラインダンスに至って払拭されます。やっぱり、波打つような群舞の Riverdanceが最高! もうここからは手拍子で会場全体が一体となって、舞台に声援を送ります。

 プリンシパルのおふたりが深々とお辞儀をして(この「お行儀の良さ」が心地良いのです、Riverdanceは)舞台を去った後、Repriseは再び、大好きな「Oscail …」から始まります。(つくづく、上手い構成だと思います) もう、ここから立ち上がりたい!という衝動を何とか抑え、1演目毎に再登場してくるみなさんに手拍子&拍手を送りながら、この一週間、この10年間を、たった2時間弱の夢だったかのように思い返します。

 最後のスタンディング・オベーションは、今日のマチネの方が賑やかだったようにも感じました。(何せ、私より妻の方が早く立ち上がったくらいですから)

 私たち夫婦が連日通い詰めた名古屋公演は終わってしまいましたが、まだ、新潟、富山、福岡、倉敷、大阪と、公演は3週間続きます。これが、本当に最後の来日公演にはならないことを願い、いつもの、これまでの来日公演の時のように、アンコールも控え目に切り上げ、家路に就きました。

by みれーぬ

レポートお待ちしてます
あなたも自分の視点で書いてみませんか?