RD2008:5/18昼:

Takaさんを見にはるばる仙台へ。ちゃーりーさんのレポートです。
Jun. 1 2008
posted by ちゃーりー

「眉山」という小説に『ぞめき』という言葉が出てくる。辞書で調べると「騒き(ぞめき):浮かれ騒ぐこと」なんて情緒のない説明がされているが、小説の中では主人公の母が次のように語る。
「体の芯が粟立つようないても立ってもいられないような静かな興奮のことをね、そういうんだよ」
「Reel Around The Sun」で最初のステップの瞬間、光の中からプリンシパルが飛び込んでくる瞬間、「Riverdance」で舞台袖からダンサーたちが早足で現れるシーン、「Firedance」で鮮やかに動く指先のシルエット、「Riverdance International」で徐々に加速していくアカペラステップ。こうした様々なシーンで私が感じる感覚はまさに「ぞめき」だと思う。そして普段の生活では感じることのないこの感覚が大好きで、それを味わいたくてこうして来日の度に自分は何度も会場に足を運んでいるのだろう。

 2003年来日の時は当時住んでいた郡山から車で行ったが今回は新幹線。もともと行く予定はなかったのだが、Takaさんが今回は仙台だけ乗ると聞いて急遽チケットを取った。会場は前回と同じ仙台サンプラザホール。仙台駅からのんびりと歩いて行くと、どうやら同じ方向に楽天イーグルスの球場があるらしく、結構家族連れを見かけた。もちろん、その中にはRDを見に行く人たちもいたのだろう。

 開演が12:00で、昼食をしてから入るには微妙な時間だったのでホール手前のコンビニで軽く腹ごしらえ。ついでにAir掲示板に書き込みをしてみた。「続きはWebで」と書いてあとでこのレポートにリンクさせようと目論んだのだが携帯からの書き込みをいじるのは難しそうだ。

 会場に着くと窓口で当日券を売っている。「得チケ」に指定されたくらいだから結構余っていたのかもしれない。場内は撮影禁止だから、と会場の入口でカメラを回収している。5年前に来た時もそうだったが、何の意味があるのだか疑問。中に入ってすぐの所で物販をしていたので覘いてみた。新しいDVD等は無いようだったので、とりあえずパンフレットを購入。案の定袋はくれなかったので袋代わりにシューズ袋とボールペンを購入。シューズ袋は既に持っているものとはデザインが異なり、またボールペンは初お目見えだったと思う。あれだけインパクトの強い人形(通称:キャベツ人形)のことを忘れていたくらいだから私の記憶なんて当てにはならないが・・・。

 座席はRゾーンC-48、このホールならではの「前方&左右に障害物(座席)のない席」。周りに気兼ねなくスタンディングできるものの、なんとなく一人身の寂しさを感じる。

 舞台のセッティングは赤坂ACTシアターの小さめのステージに合わせているのか、バンド席を舞台上に設えており、ミュージシャンたちは舞台上手から現れて客席に手を振りながら席に着いた。やがて客席の照明が暗くなり、低い声で英語のアナウンスが流れる。「新しいナレーションかな?」と思って耳を澄ませていたら何のことはない、「録音・録画は禁止。携帯電話等は電源をお切りください」という意味の注意だった(笑)

 いよいよ音楽が始まり、3年ぶりの生RDが始まる。静かなナレーションと共に舞台上にはドライアイスが満ち、ダンサー達が静かに配置につく。ナレーションが終わり、後ろを向いていたダンサーが振り返り、最初のステップが打ち鳴らされる。今回で5度目の来日、その間もDVDは何度も見ているし、生で見るのもこの仙台公演でもう10回目。それでもこの瞬間の興奮はたまらない。まさに「ぞめき」。

 24日のダブリナーズ・イベントでTakaさんが言っておられたが、細かい演出はこの10年の間に少しずつ変化しており、またカンパニーによっても若干異なるらしい。確かにオープニングの振り付け等でおや?と思う場面もあったがそんなものは些細なことだ。ダンサー達がいったん袖に消え、光の中からプリンシパルが飛び出してくる頃には早くも気分は最高潮だ。

 今回の公演、ダンサーたちはもちろんだが歌と演奏もすばらしかった。女性シンガーの透き通った声とHeal Their Heartを歌うMARK氏の深く響き渡る声。人数は少なかったがバンドの演奏もアドリブたっぷりで最高だった。フィドルを男性が演奏するのは初めて見るが、ノリの良さに性差があろうはずもなく、非常に痛快な演奏だった。

 今回の公演でフラメンコを演じてくれたのはROCIO MONTOYAさん。Firedanceではマリア・パヘス姐さんの男性ダンサーを従えるような迫力ある踊りとは異なり、時に笑みを浮かべながらダンサーの間を泳ぐように素晴らしい踊りを披露してくれた。RDでは初めて来日する方だと思うが一発でファンになってしまった。

 見ている方の途切れぬ興奮をよそにステージは進み、いよいよ第1部クライマックスの「Riverdance」。圧巻のステップに観客のボルテージは上がり、フィニッシュと共に大拍手。ダンサーが退場して客席の照明がつくと思わず大きく息をついてしまった。

 第2部が始まり、舞台と客席が一体となって大きな手拍子。第1部が「魅せるステージ」なら第2部は「共に楽しむステージ」ではないだろうか。「Lift The Wing」ではなぜか女性シンガー一人が通しで歌い、最後は寂しげに自らを抱きしめた。舞台裏の事情か、演出か、見ている側には不明だがこうした変化も実に新鮮だ。

 第2部の人気演目、「Trading Tap」。Tap DancerがIrishを真似てからかうシーンではIrish Dancerの方から「オイ!」と声があがり、客席からも笑いが起きた。3対2の不利のせいかTap側が若干押され気味の印象だったが、Irishの洗練されたダンスに対し、天衣無縫の自由なTap Danceは実に楽しげですばらしかった。

 ダービッシュでは最初に男女3人のダンサーが交互に技を見せる。男性は3人それぞれ異なるジャンプを披露し、女性はくるくると回りながら舞台を斜めに横切りポーズを決める。観客はその都度拍手を送るのだが、男性ダンサーのダイナミックなジャンプと比べて女性のスピンがおとなしく思えてしまう。特に3人目のスピンは私の気のせいか、どうも動きが小さくまとまっている印象を覚えた。観客の拍手も3人目の時は少々控えめだった気がする。とは言え、その後の踊りはいつも通りに素晴らしく、特に抱え上げられた女性ダンサーが男性ダンサーの足の下をくるくる回る技は何度見ても驚かされる。

 ステージは進みいよいよ最後の「Riverdance International」。JASON OREMUSさんの超高速ステップに魅入り、アカペラの力強いステップに聞き惚れ、一列に並んだダンサー達の一糸乱れぬ動きに感動し、次第に興奮が加速していく。この感覚は映像で見ても決して感じることはできない、生RDだからこそのものだ。感動と共にフィニッシュ、手のひらが痛くても気にしない。ひたすら拍手。ちょうど私の席の正面にTakaさんがいたので周りを気にせず声援を送った。残念ながら客席からの声は舞台では聞き取りづらいらしい。無理もない、おそらく拍手の音ですべてかき消されているだろう。

 フィナーレではダンサー達が再び舞台に登場する。この時の拍手の大きさは各演目の評価のバロメーターだ。プリンシパルの二人は別格として、今回の公演ではフラメンコのROCIOさんとバリトンのMARKさんの評価が高かった。全員が舞台に登場したところでRiverdanceのメロディと共に全員がステップを踏む。一度目はまだぐっとこらえて、座ったまま手拍子を送った。再びの大拍手の中で二度目の音楽が始まると抑えきれずにスタンディング。この時周りのことは気にしてはいけない。周りが立っていないからといって遠慮する必要もない。観客がその感動を舞台に返すにはこれしか方法がないのだから。手が痛くても構わない。感情の発露を無理に抑えるのは体に悪い。ここで躊躇したら後で悔やむだけだ。

 全てが終わり、最後までステージに残って客席に手を振ってくれていたプリンシパルの二人が袖に消えて客席の照明が点される。すでに立ち上がっていてそのままさっさと帰る人、席について余韻に浸る人、圧倒されたのか呆けている人、客席の様子は様々だ。ロビーに出ると物販コーナーには人だかりができている。感動を人に伝えるのは生で見た人の義務だ(断言)。DVDでは生の迫力の数割しか味わえないが、新たなRDファンを生み出すためにも家族はもちろん、友人達にも紹介して広めてほしいものだ。

 残念ながらRDのチケットの値段は決して安いとは言えず、それがネックとなって新規の観客がなかなか増えない気がする。だからこそ「最後の来日」などという話が出てくるのだろう。しかし私たちが来日の度に何度も足を運ぶのはそれだけの価値があることを知っているからだ。検索サイトで「リバーダンス」と入力すれば公演のオフィシャルよりも上位に「Air」がヒットする。初来日以来のRDの歴史がこのサイトにはある。公演を見てから2週間も経ってからレポートを書いている身で言うのもおこがましいが、公演を見た人は是非ともその感動を文章にして残してほしい。そして一人でも多くの仲間に読んでもらってほしい。

 RDの来日の度にmoriyさん主催でオフ会を開いている。なんとなくメンバーが固定になっている感が否めないが、今回のオフ会では新しい仲間も参加してくれた。次回の来日(きっとある。きっと来る!)の時にはもっともっとたくさんの仲間と語えることを願う。

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