Airオリジナル企画:Flying Squadインタビュー
質問作成協力: | けいとさん、トントンさん |
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インタビュー: | moriy、トントンさん |
インタビュイー: | Padraic Moyles(以下Padraic) Melissa Convery(以下Melissa) Nicola Byrne(以下Nicola) Ryan McCaffrey(以下Ryan) |
通訳: | 伴野由里子さん |
Spcial Thanks: | H.I.P. |
リバーダンスFlying Squadインタビュー
2008年3月30日@ホテルニューオータニ
2008年3月後半のFlying Squad(プロモーション用の小規模のチーム)来日の最終日、2008年ツアー主催のHIPさんのご厚意で、プリンシパル級のダンサー4名の方々にお話を伺うことができました。
左からRyan、Padraic、Nicola、Melissa |
Q. 今回、リバーダンスは約3年ぶりの公演ですが、何か変わったところはありますか?
Melissa
大きな変化はありませんね。1曲振り付けがちょっと変わっていて、もしかしたら衣装も若干変わっているかもしれませんけれど、リバーダンスでは、変わらないことが大事ということもあるんです。
リバーダンスでお客さんがなにを見たいかというと、やっぱりアイリッシュダンサーが一列に並んで、速く正確なステップを踏むというのを期待しているわけです。過去には大きな変化を持たせようという試みもあったんですが、お客さんの反応として、「変わらない方がいい」というものが多かったんですよ。
Q. みなさん、リバーダンスでどのくらいのキャリアを持っていらっしゃるんですか?
Melissa
わたしは11年。
Nicola
わたしは8年。
Padraic
僕は10年。
Ryan
8年くらい。
Q. その長い間、どのようにしてモチベーションというか、フレッシュな気持ちを保つのでしょう?
Ryan
ショーの内容は変わらないけれど、演じる方はすこしずつ違うんだ。「今日はこうだったけど明日はこうしよう」とか、毎回毎回が自分にとっては新しいショーなんだ。特にプリンシパルは振り付けの自由度が高いから、自分なりの変化を持たせることができる。
Nicola
毎回違うお客さんの前で踊るというのもありますね。初めてリバーダンスを観るお客さんの感動というものを感じながら、自分も新鮮な気持ちで踊ることができるんです。
Padraic
あと、いっしょにツアーを回る仲間からの影響もあるね。僕もRyanもプリンシパルの経験があるんだけど、お互いに「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」みたいなことを話し合って、お互いを高めていくんだ。
Q. リバーダンスにはアイリッシュダンサーだけではなく、ロシアのバレエやスペインのフラメンコなど各国のダンサーが参加していますが、それらのダンスの影響を受けることはありますか?
Melissa
非常にありますね。特にロシアのバレエダンサーからは、上半身を美しく見せる動きについて大きな影響を受けています。
Ryan
フラメンコやタップダンスからはリズムの取り方とか、かっこいいステップを取り入れたりするよ。一度ツアーを回れば、タップやバレエのレッスンに通ったのと同じくらい学べるね。
Q. 実際、アイリッシュダンサーがバレエやフラメンコのレッスンを受けたりするんですか?
Padraic
いや、ちゃんとしたレッスン受けるわけではなくて・・・
Ryan
舞台裏で「そこちょっと見せてよ」とか、そういう感じだね。
Nicola
中には他のダンスのレッスンを受けたりしてる人もいるわよ。(訳注:リバーダンスとは関係なく個人的に勉強しているということ)
Padraic
でも多くのダンサーは、親がアイルランドの伝統を大事にしていて、それがきっかけでアイリッシュダンスを始めているから、小さい頃からアイリッシュダンスひとすじで育ってきている感じの人が多いと思うね。
Q. では、ボイストレーニングなどはどうでしょう? 最近はダンサーがシンガーとしても舞台に立つようになりましたが・・・。
Melissa
カラオケに行ったくらいかしら?(笑)
Ryan
僕ら(プリンシパル)の場合は、シンガーとして出ることないので、ボーカルトレーニングを受けたことはないけれど、ダンサーの中でも声がいいと認められた人には、シンガーとしてのレッスンがあったりするね。
Q. 『リバーダンス』の中でみなさんのいちばん好きなシーンはどこでしょう?
Melissa
わたしは『Riverdance』ですね。ダンサー全員がステージに上がるというのと、なんと言ってもリバーダンスを世の中に広めた曲だということ、あと、プリンシパルがソロやペアで踊る場面が多いのが気に入ってます。
Nicola
わたしは『Trading Taps』。タップダンサーとアイリッシュダンサーの掛け合いでは毎回違うステップを見ることができて、生み出されるリズムもすばらしいですね。いつもステージの脇から見てますよ。
Q. 自分でもやってみたい?
Nicola
そう、女の子が『Trading Taps』をやってもいいのにね(笑)。
Padraic
僕はMelissaと同意見で『Riverdance』。オリジナルの曲だし、曲の構成も、ソフトな感じからだんだんと盛り上がって行くところがいい。ステージの構成も、ソロからだんだんと人が増えていって、最後はものすごいエネルギーがあふれてくる。作品のハイライトになっている作品だというところだね。あの曲が終わったあと、観客の人たちが感動している様子を見るのも好きだね。
Ryan
『Finale』が好きだな。最後にいろんなダンサーがそれぞれのダンスを見せて拍手を受けるところ。あそこは登場する人数が多くて盛り上がるし、自分のダンスに対してお客さんからの大きな反応を感じることができるというのはいいね。そのままもう一回ステージができそうなくらい気持ちが熱くなるよ。
左からRyan、Padraic |
Q. ところで、ダンスキャプテンというのはどういった役割なんでしょう?
Ryan
まずみんなの振り付けのチェックだね。リバーダンスでは群舞でみんなが一斉に同じ動きをすることが重要なので、リハーサルの時に自分だけ前に出て、一人ひとりの動きをチェックして修正する。
あと、ツアーには専属のマッサージ師とかトレーナーがいるんだけど、そういう人たちがいつ誰を担当するかのスケジューリングなんかもする。
それに、ダンサーは毎日出続けているわけではなくて、ローテーションを組んで順番に休みを取ったりするし、出ているときも踊る場面(や立ち位置)が毎回変わったりするんだ。そういうローテーションのスケジュールを作るのもダンスキャプテンの仕事なんだよ。
つまりは、部活のキャプテンと同じで、みんなをまとめて、頼りになって、みんなが最高のコンディションになるような環境を作ってあげているんだ。でも30〜40人のチームともなると本当に大変だよ。その上、自分の体調も管理しなければならないし・・・。
Q. ツアーの最中にケガをする人もいますよね。
Padraic
そういうときはまずカンパニー専属の医師が診て、ケガの状況に応じて、様子を見ながら続けるか、帰国するかを決めるんだ。で、帰国するとなったら代わりのダンサーを呼ばなきゃいけない。そのへんの調整もダンスキャプテンが関わっているんだ。
Q. みなさん1994年のユーロビジョンの時、どこで何をしていましたか?
Melissa
んー、たしか子守りのお手伝いしてた(笑)。
Nicola
わたしは家のテレビで見てました。自分が通っていたダンススクールの人が何人も参加していて、なにかスゴイことをやるらしいというのは聞いていたので。
Padraic
実は観ていないんだよね。その頃はNYに住んでいて、僕はサッカーに夢中だった。その後ラジオシティにきたときに初めて『リバーダンス』を観て「これだ!」と思ったのは覚えてる。
Ryan
僕はカナダ出身なんだけど、ちょうどそのユーロビジョンのころ、父親がアイルランドの親戚のところに行っていてね。それで父が録画したテープを持ち帰ってきて、「ものすごいものを見せてやるよ」って言われたんだ。それを姉と一緒に観て、すごい衝撃を受けた。
あれはアイリッシュダンスをやっている人にはものすごく衝撃的な瞬間で、いつかはあそこに立ちたい、とみんなが思ったと思う。
Q. 男性お二人に伺います。リバーダンス以前、男の子にとってアイリッシュダンスというのはどういうものだったんですか?
Padraic
簡単ではなかったね(笑)。
以前は、ちゃんとした大会に出るときには男の子はキルトをはかなければならなくて、学校の友達からは「うわ、男なのにスカートはいてる!」って言われたよ。けれど、リバーダンス以降、一気に「何かかっこいいことやってる奴だ」と思われるようになった。すべてはリバーダンスのおかげだと思う。
Ryan
僕も同じ。アイリッシュダンスをやっていることを学校ではずっと内緒にしてたんだけど、ある時転校したら、そこに昔、同じダンススクールにいた奴がいたんだよ。「やばい、バレる!(ダンスのことは)話さないでくれたらいいんだけど・・・」と思っていたらやっぱりバラされて(笑)、大変だった。
でもリバーダンスがメジャーになってからは「オレ、あれできるよ」って自慢できる感じになったね。
Q. では、次は女性お二人に。女の子の側でもリバーダンスが現れたことの影響ってあったんですか?
Melissa
わたしはすぐ「あのステージに立ちたい!」って思いました。翌年(1995年)2月のアイルランドでの初公演を観に行ったときは、客席で一緒に踊ってました。そのあと、オーディションの機会があって、すぐにリバーダンスに参加できたのは幸運でしたね。
Nicola
それまでは、アイリッシュダンスをやっていて、目標というと競技会でどういう成績を残すか、ということだけで、リバーダンスのように、多くのお客さんの前で踊るなんてことはほとんどなかったんです。もちろんそれで生計を立てるなんてことも考えられなかったし。それがリバーダンスの登場から、ダンスで食べていけるようになったり、世界中を旅することができるようになったり、そういう意味でリバーダンスの影響は大きかったと思います。
Q. 次は衣装について。競技会で女子が着る衣装と、リバーダンスの衣装とはかなり違いますけれど、どっちが好きですか?
Melissa
何年か前、自分が競技会で着ていた衣装を着てみたんですけど、相当に重かったですね。それに比べたらリバーダンスの衣装はとても軽くて踊りやすいと思います。
Q. 最近、公演以外でアイリッシュダンスを踊ったことはありますか?
Ryan
何ヶ月か前、ワークショップで踊ったよ。
Padraic
ツアーを離れていると、なんとなく踊りたくなることがあって、そういうときはスタジオに行って足慣らしをしたり、Ryanが言ったみたいにワークショップを開催したりする。
あと、ワークショップの話で言えば、日本でアイリッシュダンスをがんばってやっている人たちにアイルランドに来てもらって、たとえば合宿みたいな形で集中レッスンをやるみたいなこともMelissaと考えているよ。
Nicola
テレビ番組の中で、芸能人にアイリッシュダンスを教えて、その人とペアを組んで勝ち抜いていく、みたいな企画をやりました。(訳注:『Celebrity Jigs 'N Reels!』[rte.ie])のことだと思う。ここ[rte.ie]にもNicolaの名前が。)
Melissa
わたしはあんまり・・・その・・・怠けてます(笑)。スタジオに行って踊ったり、夫がミュージシャンなので(訳注:イリアンパイプスのDeclan Mastersonさん。何度か来日してます)、彼が演奏してわたしが踊る、みたいなことはしてます。
Q. 他のアイリッシュダンスショーで気になる作品ってあります?
(口をそろえて)リバーダンス以上のものはないですよ。リバーダンスこそがプレミアムダンスショーです。
左からNicola、Melissa |
Q. みなさんいろんな国に行って、いろんな文化に触れていると思うんですが、そういう中で特に影響を受けたものってありますか?
Melissa
日本にいると、いい人間にならなきゃと思いますね(笑)。
Nicola
そうね(笑)。
Ryan
訪れたそれぞれ場所で、いいなと思ったものは自分の中に取り込んで持ち帰りますね。たとえば日本だったら、みんな親切で礼儀正しい。だから自分もいい人になろうと思う。僕はカナダ人だから、ヨーロッパに行くと、いろんないいところが見えて、そういうものをやっぱり取り入れたいと思う。
Q. 国ごとに、お客さんの反応ってどんなふうに違いますか?
Ryan
アメリカはうるさいというか(笑)、盛り上がるよね。『Trading Taps』なんて、アイリッシュとタップの両チームにすごく声援を送るし。それに比べるとヨーロッパは落ち着いているというか、大人の反応かな。
Melissa
日本のお客さんはすばらしいですよ。後ろの演目になるにしたがって盛り上がるし、自分たちが楽しんでるということが伝わってくるし、演者としても気持ちいいです。
Q. 一番変わった反応をするお客さんは?
Padraic
ショーの途中はいろいろあるんだよね。アメリカなら騒ぐし、ヨーロッパなら落ち着いているし。でも最後にはみんなスタンディングオベーションをしてくれる。最終的にはなぜかどこの国でも同じ反応なんだ。
Q. 自分がステージに立っているとき、いちばんうれしい反応は?
Ryan
家族が来ているときかな。友達とか。家族が来ているときはものすごく声援を送ってくれるから、こっちもやりがいがある。
Q. そういうときは家族に向かって特別なアピールとかするんですか?
Ryan
振り付けは変えるわけにいかないけど、だいたいどの辺にいるかはスポットライトの中にいてもわかるから、ウィンクしたりはするね(笑)。
Q. 目標とするアイリッシュダンサーっています?
Nicola
わたしは、自分が小さい頃、上のクラスで踊っていた先輩ダンサーがあこがれでした。
Q. アイリッシュダンスの靴って特殊だと思うんですけれど、皆さん何か特別な扱いとか、カスタマイズをしているんですか?
Ryan
買いたての靴は硬くてマメができるんだよね。履き古した靴をいつまでも使ってる。
Nicola
バックルをつけたり、ストラップを変えたりっていうのはあるけど、やっぱりみんな履き古しを使いますね。捨てる寸前の靴をだましだまし使うというか。
Q. ツアー中、何足くらい持って行くんですか?
Padraic
少なくとも2足だね。
Ryan
そう、履き古しを1足と、新しいのを1足。新しい靴をだんだん慣らしていくんだ。カンパニーの中でも、新しい靴を履くときは「これ初めてなんだよ」って自己申告する。そのくらい新しい靴というのは気を遣うものなんだ。ひとつのイベントというかね。
・・・なるほど、日本ツアーでもどんどん盛り上がって行きたいと思います。本日はどうもありがとうございました。