RD2003:11/8夜:がんばれ"コナ平"!
座席: | 1階7列50番 |
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なるほど。
いや、コナー・ヘイズのことが気になって観察してみた。
んー、「軸がブレる」ってのとはまたちょっと違うようなんだ。言葉遊びではなく、何というか、感覚として、それとは違うものみたい。
彼の場合は、体重をかけて力一杯ステップする。そしてそのせいで、体が大きく動く。
右足で鳴らす時には右に、左足で鳴らす時には左に、爪先で鳴らす時には前に、かかとで鳴らす時には後ろに重心が移動する。(まあ、これを瞬間的に出来ること自体はものすごい運動能力なワケだけれども)しかも、ひざを折り曲げ、伸び上がるような動作をしながらそのまま床を"蹴り抜く"ようにステップをするので、上体は前後左右に移動し、頭が揺れ動くように見える。
(酷い時には、いや敢えて非常に悪く言えば、コメディアンがする"ニワトリ"みたいだ)
まあ、これをブレると言えばそうなんだけど、彼の場合は、その力一杯のステップのために安定感を敢えて捨ててまで作り上げた、ダンススタイルなのかも知れない。
何故か。
終演後に普段着の彼を見た。
舞台上での彼は、長身で筋肉質のごつい体格に見えたのだが、実際にはそれほど大柄でもなく、どちらかと言えば、華奢で繊細な体格のようだ。(そして顔も小さく、艶々しており、思っていたよりずっと若い)
舞台の上でより大きく存在感を出し、そして強烈な音を出そうとすると、道具に頼るか、自ら力を入れるか、ということになるだろう。
彼の選択は後者のようだ。その結果、歯を食いしばり鬼のような形相になる。
問題は、若さ(一体彼は何歳なんだろう?)故に力の使い方が身に付いていないのか、或いは「鳴らない床」の為か?
そう、今回は何故か「鳴らない」。
(と言うか、聞こえて来ない)
5日の初日は1階5列目、この夜も7列目(けいとさんありがとう!)という非常に幸運な席でありながら、ソロの場面になると聞こえてくるのは厚紙を敷いた上で踏みならしているような、くぐもった音である。
「タン、タン」ではなく「ボン、ボン」なのだ。
床材の違いなのかと思い、後ほど"違いの分かる"方に会った際に尋ねてみたものの、「そうではないらしい」との答え。
ヒールクリックやYolanda さんのサパテアードはよく響いてくるのに、何故か、(特に「Reel Around The Sun」から1部終わりの「Riverdance」までは)他のダンサーを含めてIrishのハードシューズは、思いの外響かない。
ナゼ?
確かにIrishのハードシューズは「Trading Taps」で分かる通り、「カツン、カツン」ではなく「コツン、コツン」(うまく表現出来ないけど)なワケだし、本来はこういうものだと言われてしまえばまあ、そう納得するしかないのだけれど、それにしても・・・どうなんだろう。
逆に考えれば、今までホールで聴いていた音が、本来とは違うものだったのかも知れない。
果たしてどうなんだろう。
さすがに前の方の席というのは、色んな意味で面白い。
スピーカーから流れてくる音と、ステージから聞こえてくる音、そして実際にダンサーの踏むステップのタイミング。これらの違いが今回ははっきりと分かる。
いわゆる「足パク問題」というのは承知している。
プリンシパルらのソロの場面で、録音を流すというのは却ってリスクが多いので余り無いだろうが、「American Wake」のような集団の場面に於いては「目で見た音」と「スピーカーから聞こえてくる音」が違うので分かり易い。
前回(2000)の時に気付いたのだけれど場面によってこれら録音を被せることは、(使い方を間違えなければ)とてもいい効果を生み出すことが出来る。
騙すとか騙されるとか言う問題とは全然違う。
使うことでどうなるかというのは、実際に見た方が感じたままでいいと思う。
ここまで書いて話を「鳴らない」方に戻すと、思うにやはり以前とは違うのではないか?
例えばコナー・ヘイズのソロの場面などは、敢えてPAを押さえて「生音」で勝負しようとしたのではないか?、と。それは先にも述べたように、コナー・ヘイズならではの「力強さ」をアピールしたかったからではないのだろうか。
まあ、これ以上はワタシには何ともわからん。分からんことをとやかく考えても埒が明かないので、詳しい方の評価を待とう。
それに引き替えコーラスを含めたシンガーの歌声はとてもよく聞こえてくる。
今回は名古屋と大阪公演にて何かしらの事情で非常に悪い状態にあったようで心配の種ではあったものの、いざ東京公演の蓋を開けてみると、特に女性リードシンガーのSarah Burgessなどは、実にこれまでになかったほどに素晴らしいではないか。1999年からいつも評価が低かった女性Vocalistだが、今回は非常に嬉しい誤算であった。
さてこの夜は初日に比べると、固さも取れたようで非常にいいステージだった。
コナー・ヘイズも、相変わらず「ドカ!、ドカ!、ドカ!」ではあるものの、5日と比べると落ち着いた感じがする。
しかし、圧巻なのはやはりヨランダさんなのである。
1999年の初来日時、マチネで観た時にはどちらかというと線の細い感じがしたのだが、今回は異様なほどに迫力満点なのだ。勘ぐれば、サパテアードを敢えて大きな音量で聞かせていたのかも知れないが、それにしてもあのきめの細かい、それでいて彼女の小柄な体格など忘れさせるほどの迫力は、もう口を開けて見取れるしかない。
マリア・パヘスとは全然違う。しかし彼女の優美さとはまた違い、綺麗に流れながらもきっちりと見せるブラソは、やはり確かに現代的バイレなのだと思う。
(ただ彼女を観ながらちょっと心配?になったのは、やはりこの人も「アンダルシアのおばちゃん」に近づいてきたのかな、という事である(^_^;)
そして、彼女が良すぎるせいで、また「Heartbeat of the World」での"差"が目立ってしまう。
まあ、これを「引き立て役」に回ったのだ、と考えればそれはそれで良いのかも知れないが、、、
なら、もっと引き立てて欲しいのがJoanneさんなのだ。
(あ、このネタは次に取っておこう・・・長くなるかも知れないから)
ところで、初っぱなの名古屋公演から話題になっていた"Trading Taps".
Walterの不調が言われる中で、この夜はとてもノっていた。確かに言われてみればキレが悪いし、思い切りも良くない。内容もRogelio Douglas に任せた感じで、彼自身は今ひとつの様子もある。
だが、そのRogelio がまたいい。体つきの割に、非常に軽快なステップを見せてくれる。
Walterがベストでないのは残念だけど、充分満足の行くものだと言っていいと思う。
しかし、この日もワタシにとって一番のRiverdance体験であった、2000年の東京楽日を超えるものではなかったのだった。