RD2003:11/5夜:大好きだから・・・
2003年11月 5日夜S席1階5列45番より。
表するに、Michael Flatleyは天才である。
あのセンス(この際、ちょっと悪趣味な部分やハリウッド的指向には目を瞑るとして)とテクニックは、間違いなく抜きん出ている。Riverdanceが今もなお新鮮に見えるのは、ビル・ウィーランの音楽と並び、コレオグラファーとしての彼の才能を、否が応でも思い知らされる。
Colin Dunne は、大胆かつ繊細。
ちょっと野暮ったい風貌から来るイメージは一見重く力ずくに見えがちだが、さにあらず。力強くも正確なステップを見せる彼は、ストイックである。ジーン・バトラーをもって「地上最強のダンサー」と言わしめた人である。
1999年の初来日に続き、前回の来日公演"Riverdance 2000"(ミレニアム)に於いて全てのステップを自分の物とし、まさにパーフェクトなステージを披露したBreándan de Gallaíは、あたかも降り注ぐ陽光を思わせる。
高く、明るく、強く、速い。「Reel Around The Sun」での登場シーンで見せた繊細かつパワフルでいてキレのあるステップと陽気な笑顔は、観る者を安心させ、客席を包み込んだ。
さて、Conor Hayes はどうだ?
メルボルン育ちでチャンピオンシップを幾度と無く勝ち取ったキャリアは、Riverdanceで踊り始めてからも充分な時間と経験を持っている、筈である。
「Reel Around The Sun」で登場した彼は、しかし、前方を睨み付け、歯を食いしばってステップしていた。
足元を見ていれば悪くない。音を聞いていれば悪くはない。
だが、彼のその、苦痛をこらえるかのような表情は、、、これは解釈の問題だろうか? それとも、彼の技量の問題だろうか?
いや、前に挙げた三者は、もはや別格なのだろう。
複雑で困難なステップを笑顔の下で踏む彼らと、安易に比べてはいけないのかも知れない。
しかし、願わくばその上下左右にブレる体の軸を固定し、その満面朱を注ぐかの如くの表情に(ほんの少しでもいいから)笑顔を加えて欲しい。
もしや東京初日の緊張のせいか? あるいは疲れが溜まっているせいか? なら、次に観に行くステージで、あらためて評価を下さなければならない。そうであって欲しいとも願うが、待ちに待った11月5日の夜は、私にとってちょっと寂しさを隠せない夜となった。
「Trading Taps」では、Walter 'SUNDANCE' Freeman に何とか食らいついた、と言うところだろう。しかし、「Heartbeat of the World」に於いては完全にYolanda Gonzalez Sobrado のパートナーではなかった・・・。いや違う、視点が逆だ。彼女の安定感のあるリズム取りと正確で力強いサパテアードは、この夜ステージに上がった全てのダンサーに比して、格別であり秀逸であった。
「Andalucia」で彼女は、その迫力と繊細かつ正確無比なステップで、観る側を飲み込んだ。1999年にマチネで観た時とは明らかに違う。(とは言うもののワタシも高熱を押して会場にたどり着いたのですが、、、)
"Ole!"の声が掛からなかったのは、客席が言葉を失ってしまったからか。それくらい素晴らしいバイラオーラだと思う。
今度のRiverdance 2003は、Yolanda を観るために通っても損はない。
・・・そうは言ってもJoanne Doyle !
2000年の来日ではコンディションの問題からか、ステージに上がることなく帰ってしまった彼女が、ようやく日本のステージに帰ってきた。
6月21日、ダブリンで行われたスペシャルオリンピックのオープニング・セレモニーにおいて、100人!のダンサーを従えて「Riverdance」を踊ったのは記憶に新しい。
彼女の素晴らしさは、数多い。(技術的なことなどはおそらく他の方がこれでもかと書かれるだろうから、控えめで奥ゆかしいワタシ(。_☆\(^_^;としては遠慮しておくが、)最大のチャームは「笑顔」である。
長年のキャリアにもかかわらず、観客からの拍手を素直に受け止め、とても嬉しそうな表情を見せる。
たとえそれが演技や演出だろうが、一向に構わないと思わせるほどの笑顔だ。
時間的なことだけを考えれば、これだけ長い間リードを務めてきて「そろそろ?」などと思ってしまう事もあるわけだが、ステージに立つ彼女を見る限りそんな心配はいらぬお世話のようだ。少なくとも今回の来日公演では、また美しい彼女を見ることが出来たのだから。