RD2003:11/2夜:大阪城ホール最終公演
大阪城ホール最終公演。木曜日に比べれば客の入りは大変良い。席は7列目の46,47番で、センターブロックの右端になる。イープラスの先行予約は前の方なのは良いが、やや外側に偏る傾向がある。まあ一生懸命電話をして取る人が中央前列なのは一向に構わないが、願わくば端の方は「ご招待席」にしてやってくれ。(苦笑)
もちろん今日はトップメンバー。コナー氏は実に力強いのだが、動きに独特の部分があるような気がする。顔の切り方とかが「演劇的」な動きが強くて、アピールはするがやや自然さに欠けるように思われる。またタップの踏み方も凄いのは凄いのだが、これまでのRiverdancersとは少し異なるように思える。どちらかと言えばジャズ系のベースを感じさせる気がするのだ。このあたりの分析は実際に踊られる方々の意見を待とう。ダンスの内容は全体を率いているように感じられ、とても良い。ジョアンさんは木曜日よりは良いが、それにしても彼女の実力が発揮されているかどうか、そのオーラは?である。前半で圧巻なのは"Shivna"だ。タップよりもジャズダンスで素晴らしいのは皮肉な感もあるが、これだけは以前から大きな変化のない1st stageの中で最も進化していて、心にグッとくる。ヨランダさんは相変わらず美しい。(笑)ただマリア=パヘス大臣のような凄まじい押し出しのあるダンスとは異なり、彼女の本当の凄さはもっと時間のあるトラディショナルなフラメンコのステージで観ないと分からないのだろう。
歌は全体にイマイチ。女性シンガーは出てきたとたんに音を外し、その後もただ高いだけの声でどうも魅力無く、随所に1/4から1/8くらいのシャープが出てしまう。後半での男性シンガーも上手いというだけで、客をつかむ力強さはない。これはうぬぬ、って感じ。イーリアン・パイプも相変わらず厳しい。リズムの解釈がクラシックを離れられないようで、アイリッシュ独特の、そして日本人にもわかりやすいノリやグルーヴの感じが全くなく、デジタルに時間を切って音を伸ばしているだけというところで、ソロは実に辛い。但しこの人(同じ人だったと思うが)縦笛はまずまず良い。でもパイプがとても重要な位置を占めるだけに、改善を望みたい。
Russian dervishも木曜日よりははるかに良く、観客との一体感もいい。ただ、他の方とは意見が違うようだが、センターで踊る人のダンスにやや強さがなく、両サイドに負けている気がする。技はいろいろと繰り出されて観ていて飽きないので、これは贅沢な注文かも知れないが、特に以前観たものと比べて進化しているとは感じられない。それに対し、初回から大阪で常に盛り上がりを見せるTrading Tapsだが、今回もGREEEAAAT!!!(笑)5人全員、そしてミュージシャンまでもが客がノッているのを確実に自分たちでも感じ取って、いつもより強く長くプレイしてくれる(なんかヤラしい表現)。何よりもダンサー自身がとても楽しんでいるように見える。はっきり言ってこれは凄すぎる歓声で、こんなとんでもない盛り上がりは1999年大阪初日のフェスティバル・ホールで観て以来だ。しかも今回はアリーナで、だ。凄い!
そして圧巻はバウロンと掛け合うMairin Fahyのフィドルだ。Heartlandの削除はストーリー的にはやはり問題ありで、世界各地に散ったアイルランド移民たちが自分の故郷に再び想いを馳せないままショウが終わってしまう(笑)のはどうかと思うのだが、その代わりのソロが強烈すぎる。Mairinのフィドルって実はアイリーン=アイヴァースと比べても遙かにトラッドを大事にしていて、とてもシンプルな判りやすいものだと思うのだが(それはReeltimeのアルバムや彼女のソロアルバムを聴いても明らかだ)、だからこそ単純に盛り上がるし、飛び道具(アイリーンのワウ・ペダルとか…)も一切必要ない。本当は彼女もできるはずのタップをやりながら弾いて欲しいのだが、さすがに年齢的に無理!?いやいや失礼。ともかく彼女たちがこの挿入されたソロのコーナーでやったのは紛れもなく"LIVE"であり、この瞬間正にホールは"LIVE IT UP"された。私にとってMairinは「好きなプレイヤー」から「女神」に昇格である。(笑)
そしてフィナーレへ。RD internationalでの二人の黒い衣装は実に格好いい。歓声も手拍子も今日は凄く、もちろん最後はスタンディング。客電がついてもすぐには拍手がやまないのはあの大阪初日と一緒だ。もしかするとあの日を知っている人間が、私を含めて大勢この日に集まったのかも知れない。
しかしそんな人間の一人として、思うことがある。それは、このままのスタイルで「次」はないかも知れない、そして「次」の意味もないのかも知れないということ。
初回と2回目の間は1年(正確には2年ほど)しかあいていなかったが、その間にRD internationalのスタイルが確立され、それははっきりと新しいものとして映った。今回、前回の公演から3年あいたために、今までRDを知らなかった人々が初めてみて感動する機会は十分にあった。しかしそれ以上の意味はどうだったか?ダンサーの違いを期待して見に来、その違いや表現の違いが分かる客ばかりではない。好事家が「確認」するためだけのショウでは、少なくとも大規模ツアーはペイしないだろう。私や初来日から行っているファンはそれでも来るたび1度は行くだろうが、それだけでこれだけの公演数、アリーナを埋めることは難しいに違いない。アメリカではアイリッシュ系移民の同窓会としての一面を持つのかもしれないが、日本ではそれもない。今の形態ではある程度「やり尽くして」しまったのではないだろうか。少なくともここ日本では。個人的にはこのまま、次回は小さめのホールツアーで来るなら喜んで観に行くが、それでは経営にならないだろう。RDの素晴らしさを今後も伝えるためには、やはり残す部分は残しながら新しいことをしていかなければならないのが一つの成功したショウの宿命なのかも知れない。もちろん、ブロードウェイ・ミュージカルのごとくロングラン公演を行うのだ(でもそれは固定したハコでやるから経費がかからないのだ)、と開き直ってこういったショウを続けるのなら、それはそれで私に反論する権利などあるわけもないが。
もちろん、彼らもそういった問題点はよく分かっているに違いない。そしてその答えは縮小でも日本公演なしでもなく、より進化した、それでいてクオリティの高いショウを再びこの地・大阪に見せつけてくれるものと信じている。そして必ず、そこにはいつもの熱いファンたちが集まるであろう。ただ「よかったよかった」を書き続ける提灯評論はイヤなのでこんな文面になってしまったが、このRDが本当に好きでたまらない想いは果たして読んで下さった皆さんに伝わるだろうか。心から、ありがとう。そして次も楽しみにしている。