RD2000:12/10昼:度肝を抜かれました。
12月10日の名古屋公演の昼の部を見に行きました。私はダンスには余り興味がなく、妻に幾分無理やりに連れられていかれたと云うのが正直なところで、初めは「お付き合い」のつもりでした。もちろん、リバーダンスに関する知識もまったくありませんでした。唯一、1年以上前の日本公演の前に、TVで宣伝用のコマーシャルフィルムを見た記憶があるくらいです。と云うわけで、他の皆さんほど技術的なことを評価するだけの目はありません。
そんな私だったのですが、開幕間もなくダンサーの群舞で硬質のリズミックなステップが始まるや背中が冷たくぞくっぞくっとするような感覚に襲われて、「これは大変なことが起きそうだ」という予感に捕らわれました。そうして、それはすぐに予感などではなく、強い確信に変わっていきました。手を使わないことが却って表現を適度にストイックにさせるようなところがあって、全体の求心力を増している様に感じました。おそらく、伝統的なアイリッシュダンスが洗練されたきたものなのでしょうが、過度にソフィスティケートされていないところが魅力ですね。それが、内に秘めた強い情熱を直接伝えてくるようで、そのすがすがしさとエネルギーに度肝を抜かれました。
それから、特筆すべきはあのスーパーバンドでしょう。客席から数えたら11人でしたが、民族的な背景も違うだろうメンバーがそれぞれ違う楽器を自在に操っていて、しかもあれだけ楽しそうにプレイするのだからたまらなかったですね。特にドラムとフィドルは素晴らしかった。
フラメンコが始まったときは、ケルトとラテンの歴史的関係はどうなってるのかなとかちょっと理屈っぽいことも頭をかすめましたが、アイリッシュダンスとは対照的に手が生き物の様に動いて、それはまたものすごい情念を感じさせて驚かされました。黒人とのタップの対決とかロシアダンスもそれなりに楽しめますが、やはりあの群舞が圧倒的でした。間に入る合唱、独唱も長過ぎて冗長にならず、色彩の違うダンスの間の雰囲気を切り換えさせてくれたように思います。全体としてはあっという間の2時間でした。観客の反応はおとなし目だったですが、それは表現の問題で、少なからず驚いた人が多かったのでは。
と云うわけで、「お付き合い」のはずの私がリバーダンスのとりこになってしまいました。それ以来、ビデオ、CDで楽しんでいます。知り合いには凄かったということを伝えようとするのですが、皆「何でそんなにムキになるの」といって取り合ってくれません。リバーダンスの楽しさは見た人しか味わえない特権だよね。世界がグローバル化することの意義は、こうした民族的な特徴を良い意味で保ったものを目にすることができることにあるつくづくと痛感させられましたね。みんなが同質になってしまってはまったくつまらない。それにしても困ったことは、他のことでは得られない楽しみを知ってしまったので、欲求不満に陥ってしまったことですね。次回公演もきっと行くことになるでしょう。今度は妻を置いて一人でもね。