ライブ&レポート:『NANTA(乱打)』
日時: | 2004年5月28日 19:00開演(約90分) |
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会場: | 天王洲アートスフィア |
2000年の初来日以来、もう4回目の来日なんだそうで、まったく勉強不足でありました。韓国のキッチン・パフォーマンス『NANTA』。
会場は天王洲のアートスフィア。客席数746のホールです。私が座ったのはJ列の一番右端の席。 客層はバラバラ。おばさまの二人組、親子連れ、サラリーマン・OLの集団。全席指定の7,500円で、当日券も出ていた模様。
ステージにはキャスター付きの調理台が4台。上手には学校の教室にあるようなアナログ時計、下手にはトーテムポール(チャンスンというらしい)。そして背景には大きなスクリーンがあって、赤い文字で「NANTA」(←書体はSTOMPっぽい?)。
金曜の夜、会社帰りで開演ぎりぎりになって席に着く人が多かったようですが、開演5分前のベルから開演までにスクリーンに日・韓・英の3カ国語で映し出されるスライドが面白い。演者が出てくる前にじっくり客席をあっためてくれます。
この作品、一言で言うと「打撃スパイスの効いた小劇場パフォーマンス」です。演者がおそろしく元気で、勢いがあるということと、客席とのやりとりを大切にしているところとか。単語レベルで「オジサン!」とか「タマネギ!」とかいう言葉はでてきますけど、セリフというほどのセリフはありませんからご安心を。
舞台はとあるレストランの厨房。出演者は5人。レストランの支配人と、料理人3人、そして突然厨房で働くことになる支配人の甥っ子。その日の仕事は結婚披露宴。6時までにフルコースをそろえなければならない。いまの時刻は5時。さてこの1時間で料理は完成するのか・・?
この全体の設定にもとづいて、いくつもの「キッチンパフォーマンス」が展開します。設定だけ聞くと、なにやら猛スピードで舞台が展開しそうな感じもしますけど、実際は単に各パフォーマンス間の進行の理由付け(時間がないから次のネタに行かなきゃ、という)のためのものです。
そしてそこで展開されるパフォーマンスは、包丁での野菜の乱打、鍋釜の乱打、デッキブラシでの乱闘、こまかいくすぐり、そして数々の客いじり。個人的にはチャンスンにお祈りする場面が好み。
細かいところはオフィシャルサイト(日本語で読めます)あたりを見てもらえばいいと思うんですけれど、この作品の「4人の演者による打撃」というのはもともと韓国のサムルノリという演奏スタイルなんだそうです。
打撃のリズムを言葉のないユニバーサルな舞台に、と来ると、このサイト的にはRiverdanceでありSTOMPなんですけれど、NANTAは演奏よりは演技に重点があるようですし、演出のベクトルもちょっと違うような(少なくとも現状は)気がします。現在のRiverdanceほどには洗練されていませんし、STOMPのようなクールなファッションやシュールなユーモアは感じられません。NANTAの特徴はそれとは方向の違う「稚気」。
小難しいテーマだとか、作品の完成度なんてことは気にせず、面白いと思ったことはやってみて、客に受ければそれでオッケー、ってな感じなのではないかと。笑いのレベルも子どもに通じるわかりやすさ。「芸をやってます」という雰囲気ではなく、中学生が掃除の時間に教室でホウキ振り回して遊んでいると、先生が現れてシュンとし、またあばれ始める・・・というような。
掲示板でjtakaoさんも書いてらっしゃいましたけど、NANTAは小さい劇場じゃないと面白くないでしょうね。演者の表情が見えないと面白くないし、食品相手だから手元の動きが多くて、アートスフィアでもけっこう身を乗り出して「いま何やってるの?」という人がけっこういました。
その意味でもやっぱり下北沢の小屋で、3000円くらいのチケットで見せるべき(ソウルでは465席の劇場で、3000〜5000円くらいで観られるみたいですけど)なんじゃないかと。
これ、NANTAフリークの方からみたら全然的はずれかも知れませんけど、ひと皿だけでもいいから舞台上でホントに料理作ってみてもいいんじゃないですかね? 料理の鉄人(いや、『愛のエプロン』レベルでいい)的なドキドキ感があって面白そうですけど・・・。
あと包丁パフォーマンスのすごさをもっとうまく伝える方法はないかと。2本の包丁をくるくる回しながら、まな板を刃や柄で叩きまくるって、相当すごいワザだと思うんですけど、動きが小さいせいかあんまりそこでは受けず、逆に「これ、日本人がやったら受けないだろうなあ(=ネタが面白いんじゃなくて外国人〜日本人のギャップが面白い)」というネタでドッと受けてたりするのがちょっと残念だったりして。