ヤン・リーピンの『蔵謎(クラナゾ)』
2010年4月9日 18:00開演
渋谷・オーチャードホール
S席・2階3列28番
いや、ホントによく来てくれたな、と思います。
東日本大震災とその後の原発事故で、海外公演の多くがキャンセルになる中、東京での公演。しまも滞在中に大きな余震(4/7夜)もあったりして、すごく不安だったんじゃないか、と思うのです。
ホールに入ると、ステージにはもう照明が当たっている。直径2mを超えるかという、7本の巨大なマニ車[google.co.jp]がそびえ立ち、出演者(らしき)人たちがそれを手で回し続けている。
席はほぼ中央あたり。2階なので距離はありますし、視点が上からだったんですが、1階なら巨大マニ車の圧倒感があったのでは。
五体投地を続けながら、チベットの聖地ラサへ巡礼する老女を中心にストーリーは流れ、その旅の途中で出会う様々な部族の歌や踊りという形でショーが構成されます。
【ACT 1】
- プロローグ Prologue
- 巡礼 Pilgrimage
- 六弦琴 Six-string
- 長袖舞 Long Sleeve Dance
- 打青(のぎへんに果) Barley Harvest
- 蓮華度母 Lotus Tara
- (うしへんに毛)牛舞 Yak Dance
【ACT 2】
- 打阿(くちへんに戛) Mortar Son
- 衣装祭 Costume Festival
- 夏拉舞 Black Hat
- 転生 Transmigration
- フィナーレ Finale
出演者が多いんですよ。男性30名女性30名、さらに歌専門らしき10数名。ラインダンスなんかもあるんですが、まあ、一糸乱れぬというほどでもなく。
男性陣が足を踏みならすようなダンスもあり、細かくはないですがある意味リズムタップ。これも人数が多いもんで、とにかく大迫力。土を棒で突き固める動作からの歌もあるんですが、これはストンプのデッキブラシパフォーマンス。
個人的にはダンスよりも歌のほうが印象に残りました。「衣装祭」での不協和音での女性ポリフォニーとか、どこからこんな声が出てくるの!?という驚き。加工されていない「生」な感じがするんです。
舞台左右にLED掲示板が立っていて、各演目の解説が流れます。演技中もずーっと流れてるもんで、ちょっと気になります。
前作「シャングリラ」もこの「クラナゾ」も、少数民族が現地で演奏したり踊ったりする様子を原生態(ありのまま)でとらえて舞台にしているそうなんですが、事前の想像に反して音楽はポップにアレンジされているし、シンセも相当使ってます。現地でもこんなアレンジで演奏してるのか知らん?
とんがりやまさんもブログに書いていらっしゃいます[tongariyama.jp]が、「リバーダンス的」というにはちょっと違う。リバーダンスも「クラナゾ」もたしかに、旅をモチーフにいろんなダンスや音楽を連ねて一つの作品としていますが、「クラナゾ」には対立も融合もなく、ただいろんな風俗が博物館的に並ぶ感じ。見る人が見れば、いろんなフュージョンを見つけられるのかもしれませんが、そもそもコンセプトが「原生態」なので、リバーダンス的なものとは別なんじゃないかと。
作品中で2回、ターラ菩薩の役でヤン・リーピンさんが登場しますが、文句なくすごいです。御年50数歳というプロフィールを疑うほど美しい肉体が見事なアイソレーションを見せます。リーピンさん自身は南部の少数民族出身らしいですが、タイやバリとかあっちのほうのダンスの影響か、指の関節一つ一つを独立して動かしているような印象。
背中が美しいです。すばらしい存在感。目を奪われます。これは誰が見ても感動するんじゃないだろうか。
・・・っていうのがまとめですかね。「クラナゾ」は四川の九塞溝というところで常設の舞台があるらしいんですけど、どっかで「シャングリラ」やってないかな。
2,000円のプログラムはコースター付きのハードカバー。豪華。