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マリア!

12/16夜

Q-TIPさん

K.D.NARUSEさん

とんがりやまさん



おそろしく精力的に東名阪をまわられたとんがりやまさんのレポートです。


12月16日(土) PM18:00〜
本日のネスレ:ゴールドブレンド+きっとカット+クランチ
本日の主演:Breandan De Gallai+Julie Regan+Maria Pages

 昼の部のロシーンさんの印象をできるだけ頭の中でキープしつつ、ジュリーさんの登場を待った。なるほど、さすがDance Captain。テクニック的には彼女の方が上ですね。ただ、やはり彼女のダンスからは「重力を感じて」しまうのはしょうがないのかな。  

 今回のジャパンツアー、東京と大阪ではマリア・パヘスに賛辞がかなり集中してしまい、肝心のアイリッシュ・プリンシパルへの評価は相対的に低めだったようにも思えるんですが、これはアイリッシュ・ダンスの限界なんだろうか?「上半身直立不動」といわれ『Trading Taps』の中で戯画化されたりもするアイリッシュ・ステップダンスは、フラメンコのもつあの表現力の豊かさにはどうやってもかなわないんだろうか…などと、つい愚考してしまうのでした。

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 マリア・パヘスというダンサーは、おそらく相当頭のいいひとである。まず『Firedance』前半でソロをたっぷりと魅せ、その後半ではアイリッシュとのからみでダンス・スタイルの違いを際だたせ(しかもアイリッシュ隊を自在に操り、従わせちゃうんだから恐れ入る)、『Heartbeat of the World』では「タップはアイルランドやアメリカだけじゃない」とばかりに凄まじい速度でステップを踏み、続く『Andalucia 』でふたたびソロに戻り、神々しい勝利宣言とともに観客に圧倒的な存在感を残す。ダンスとしてのフラメンコの多様性を示したこれらコレオグラフの、なんと戦略的でなんと見事なことか。フラメンコをとことん信じているからこそできる構成であると同時に、他のダンスとのスタイルの差異を知り抜いているからこそ可能な演出だと思う。

 フラメンコだけの特異性は、他の「非アイリッシュ」ダンスチームと比較するとさらによくわかる。モスクワチームはアイリッシュに蹴飛ばされたり(『Woman of the Sidhe』)、ケルト神話に取り込まれたり(『Shivna』)、仲良く融合しちゃってる(『Ri-Ra』)し、アメリカン・タップも見せ場が多く喝采をさらうとはいえ、最後にはアイルランド移民組と和解するのだ。ひとりフラメンコだけが、最後まで孤高の姿勢を崩さないのである。  いや、フィドル/バゥロンセッションでのカスタネット乱入があるではないか、との指摘を受けそうだが、あの場面はもともと「ハプニング」として始まったものだ。その証拠に、昨年の来日公演では、ヨランダはやらなかった筈(今年はやったが)。ラフな格好で出てくるのもそのためで、あの場面でのマリア・パヘスはフラメンコ・ダンサーとしてではなく、セッション・ミュージシャンとしての登場なんですね(そもそもは、たぶんアイリーン・アイヴァースのアイディアだったんだろう)。

 だいたい、リヴァーダンス立ち上げ時から現在まで、一貫して大看板を張っているのはマリア・パヘスただ一人なのである。フラメンコの方が、比較的ダンサー寿命が長いという有利な点もあろうが、かのマイケル・フラットレイさえ早々に切ることができたのに、いまだに(客演とはいえ)マリア・パヘスを頼りにしてしまう興行側の弱みが、今回のツアーではより明確になったのではないか。

(ちなみに、マリア・パヘスと対等に勝負できたのは、唯一マイケル・フラットレイだけだったと、今にして思う。確か『Firedance』のラストで、あの二人は抱き合うという振付になっていた筈だ。マイケルなら、マリア・パヘスをすらオトすことが可能だった。このことは、マイケルのみがいわば<Lord of the Riverdance>としてショー全体を統率できていたことを示唆している。ともすれば誰が主役なのかわからなくなってしまう現況よりも、ずっとはっきりしていてわかりやすい)

 フラメンコの踊り手なら誰でもここまでできたかというと、無論そんなことはない。彼女ならではの聡明さとしたたかな計算があってこその成功だと思う。ただ、ここまで主役を食ってしまうと、ショーそのものに破綻をきたさないか?  おそらくリヴァーダンスでマリア・パヘスの姿が拝めるのも、今度こそ本当に最後なのかも知れないし、またそうであって欲しいとさえ、思わぬでもない。

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 今回観た中で、この回がいちばん遠い席でした。スタンドで、後ろから数えた方が早いくらい(ちなみにぴあ)。城ホールは大きすぎて臨場感に欠けるのが難点で、こういう大規模な形での上演方法というのも、そろそろ考え直さなければならないのかもしれません。たとえどんなにモダンなアレンジを施しても、本来アイリッシュ・タップは繊細なダンスなのですから…

▲▽とんがりやま△▼DEC.2000


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