翻訳:Making of LOTD

Mar. 18, 2002
posted by moriy
企画:Lord of the Dance Japan
原文掲載サイト:The Don Dorcha Castle
原文ページURL:http://www.ziayeye.it/eng/lotd04eng1.html
一次翻訳:moriy
翻訳チェック&コメント協力大感謝:SUEさん、もとこさん、Fujieさん

(Lord of the Danceの初演の日、Michael Flatleyがポイント・シアターの楽屋から出てくるところから場面は始まる。通路の左側、画面には映っていない誰かが彼に何かを言うと、彼はそれに応えてうなずく。そして彼はステージに向かって歩き始め、2回ハイキックする。フェードアウト)

(訳注:さらに続いて、LOTDの本編ビデオの中から抜き出した映像が流れますが、以下そういったビデオ内容については書きません)

(Michael Flatley)
「ユーロビジョン・ソングコンテストの仕事をしたのは1994年のことだった。インターバルアクト(幕間の演目)のためのダンス作品を作るように依頼されて、僕はあの作品、つまり『Riverdance』を作ったんだ」

(1995年9月、『ビッグ・ブレックファースト』インタビュー)

(インタビュアー)
「あなたは『Riverdance』から離れようとしているそうですが、本当ですか?」

(M.F.)
「いやいや、そんなことはないよ。いま契約交渉をしている最中で、実をいえば、今朝夜が明けるまで僕はその場にいたし、きょうもまた何より先に再開するつもりだ。だから、状況はいままさに良くなっているところだよ」

(インタビュアー)
「ということは、あなたが『Riverdance』に残ることを『ビッグ・ブレックファースト』で独占告白していただけるということですね?」

(M.F.)
「ああ、そうだよ。今日中にすべて解決すればね。僕は踊りたくてたまらないんだ」

(『アフター・ファイブ・ライブ』1995年9月)

「初日、開演のほんの数時間前、『Riverdance』の主演、Michael Flatleyが脱退する事になりました」

(インタビュー)

(M.F.)
「自分が作った作品のことは自分で決めたいんだ。それだけだよ。それが無理な要求なんて思えないけどな」

(Lord of the Dance舞台裏にて)

(M.F.)
「僕はそれを自分が作ったように思っていた。そして彼らがそれを奪っていった。それでおしまいだ。とてもつらかったよ」

(『Lord of the Dance』記者会見にて)

(ナレーター)
「1994年のユーロビジョンコンテストのインターバルアクトに上演された『Riverdance』でその名をはせた、シカゴ出身のMichael Flatleyが、昨夜ダブリンで彼自身による新たなショーの企画を発表しました」

(M.F.)
「『Lord of the Dance』は、90分の壮大なダンスショーだ。そしてすべてがアイリッシュだ。音楽も、ダンスも。たぶんすこし新しい趣向も加わるだろう。演出はArlene Phillips(訳注:振付/演出家。ミュージカル『サタデーナイト・フィーバー』『スターライト・エクスプレス』など)で、照明はPatrick Woodroffe(訳注:ストーンズ、エルトン・ジョンなど大物ミュージシャンのツアーなど)、そしてJonathan Parkが舞台技術を担当してくれる。僕たちの企画はとてもエキサイティングな、新しいコンセプトで、きっとあらゆるものを新たなレベルに引き上げてくれる作品になると思う」

(M.F. 会見にて)
「僕たちは一生懸命、全力を尽くしている。だからこれでもし神のご加護があれば、とても特別な作品になるだろう」

(M.F.)
「とりあえず一歩一歩確実に進むことだ。作品そのもののことしか考えないようにしている。気持ちをその夜、6月28日に集中させているんだ」

(Lord of the Dance舞台裏にて)

(M.F.)
「このアイデアは・・・そう、何年も前からと言っていいかな、頭の中にはあったんだ。でも本当に形になり始めたのは、前のショー(訳注:Riverdanceのことでしょう)で踊り始めてからのことだった。そしてそこを離れてはじめて、自分がなにか新しいこと、まったく違うこと、すべてをもっと先へと進めるようなことがやりたいんだと気づいた。そして毎晩、このショー(訳注:LOTD)の中で使っている振付のいくつかを作り始めた。僕はあのショー(訳注:しつこいですがRiverdanceのこと)を抜けるかもしれないなんて思いもしなかったけれど、実際にはあんなことになってしまった。だからこそ、このショーを作ることが出来たんだけどね。
そして、これだけの人材が集まった。僕はこの作品を作るとき、他のダンスを参考にしたりはしなかった。僕がしたことは、ただ自分の内面を見つめることだった。僕が作り出そうとするものは何であれ僕の内面から出てくるものだ。ここで大事なこと・・・たぶんいちばん大変なことでもある・・・は、常に何かまったく新しいものを作り続けなきゃいけないってことだ。それはテレビで見るような、モダンダンスやジャズ、フラメンコとかタップのカンパニーでやっていることとは違う。どこかから持ってきたわけではないから、世界のどこに行ってもこれを見ることはできない。僕たちはここで、僕たちにしかできないことをやってるんだ」

(Arlene Phillips 舞台演出)
「最初のリハーサル(訳注:「稽古」とでも言いますか。ホントに本番通りのリハーサルは「ドレスリハーサル」)を見たとき・・・、私が参加する前に、彼らはすでに3曲くらいの演目を作っていて、それを見てただ涙があふれたわ。背中がぞくぞくするのを感じたの。あんなものは見たことがなかった。すべてが完璧に組み合わされ、まさに音楽とダンス、感動、フィーリング、素晴らしい美と情熱との完全なる融合だった。いままで見た中でいちばんエキサイティングなダンスだと思ったわ」

(Helen Egan)
「ハイ!わたしはHelen Egan。ショウではspiritっていう役で、ティンホイッスルを吹くの」

(Daire Nolan)
「やあ、僕はDaire Nolan。悪役、Don Dorchaの役なんだ」

(A.P.)
「物語というのは、little spirit、夢見る子供がいて・・・」

(MichaelとHelenがMarie Duffyの見ている前で稽古をしている)

(M.F.)
「ここで立つ。これが君の、自分のもの、そう、そうしてここの彼女たちを目覚めさせるんだ・・・・」 (訳注:画面ではこの会話と関係のない細かいカットの連続ですが、おそらくは『Cry of the Celts』冒頭のシーンについて、ティンホイッスルや金粉を手に説明しているのでしょう)

(A.P.)
「そのlittle spiritはLord of the Danceと旅に出るの。そして彼は新たに現れた悪の神に脅かされるわけ。あらゆる物語にあるようにね。そして善は悪に勝利し、ロード・オブ・ザ・ダンスはふたたびヒーローになる。

ヒロインは二人、二人の女性が登場する。ひとりは自由という意味の名をもつ若く美しい女の子で、物語の中でヒーローに愛される役。もうひとり、彼女はたいへん力のあるパフォーマーなので自分のパートを作ることになったんだけど、そこで彼女は誘惑する女を演じるわ。愛の暗い面にあるあらゆることを象徴しているということね」

(Gillian Norris)
「私は悪い女なの。Michael Flatleyを誘惑して、いい方の女の子から彼を奪おうとする役だから」

(Bernadette Flynn)
「そう、わたしからね」

(M.F.)
「男性ダンサーと女性ダンサーがお互いに影響しあうそのセクシャルなエネルギーは大したものだ。そのエネルギーはとても力強い。だから僕は、それぞれのダンサーがそれまでとはまったく違って見えるように作品を作った。彼らがひとつになったとき、光と影がエネルギーを生み出すんだ
このチームには素晴らしいダンサーが何人もいる。ホントに上澄みのいいところを集めたと言っていい。もう世界中・・・アメリカ、アイルランド、あとイギリスの北からも南からも、いろんなところから集まってきた。僕は120人ものオーディションを行った」

(女性メンバー)
「ハイ、私は(Marion)。Michael Flatleyの新しいショー、Lord of the Danceのメンバーよ」

(女性メンバー)
「ハイ、Deniseよ。私も・・・」

(女性メンバー)
「私は・・・」

(A.P.)
「こういうことができる人材はそういないから、相当広範囲にダンサーを探さなければならなかったわ」

(M.F.)
「彼らはみな数々のオーディションをくぐり抜けてきたダンサーだ。彼らはとてもやる気があって、これらすべての新しいことに挑戦して、次のレベルに行きたがっていた。彼らにとって金は問題じゃなかった。一日の拘束時間も関係なかった。彼女たちはここで磨きをかけられて、完全燃焼している」

(女性メンバー)
「ここに来た最初の1週間はホントにハードだったわ。毎晩うちで泣いてたもの。ホントにつらくて、何日かは歩くこともできないと思ってたくらいよ」

(Marie Duffy 振付協力)
「彼らはとても振付がしやすくて、一緒に仕事ができるのは最高だわ。彼らのほとんどは世界チャンピオンや上位入賞の経験があるようなダンサーたちで、それまで長い間厳しい練習を積んできたからダンスをわかっているわけ。・・・ということは、彼らはダンサーとしてのキャリアの間(訳注:アマチュア時代からプロの現在まで引き続き)、ずっとハードな練習をしていることになるのね」

(M.F.)
「新しい出来事なんだ。いままで誰もこんなことに挑戦しなかったし、こんなショーをやったことはなかったということを忘れないで欲しい。このショーはいままでとは違うタップ、違うステップでいっぱいだ。すべてが10倍くらいに高められている。」

(男性メンバー)
「僕は両親がアイルランド系だったからダンスを始めた。・・基本的にはアイリッシュコミュニティで・・・」

(男性メンバー)
「・・・は両親だった。彼らはアイリッシュで・・」

(M.D.)
「ダブリンに来てここ2、3週間過ごしたことが、ショーの立ち上げに役立ってると思うわ・・・」

(男性メンバー)
「8人の女性と一緒に住むなんて思いもしなかったよ・・・」

(M.D.)
「ほとんどのダンサーは家で両親と暮らしていたので、両親が身の回りの世話、洗濯や食事の面倒など、あらゆることをしてくれていたわけよね。ところがダブリンに来たとたん、彼らは自分で自分の面倒を見なくてはならなくなったの」(画面には『Hell's Kitchen』の稽古風景と、LOTDビデオでの本番)

(M.D.)
「私たちは入念なウォーミングアップとストレッチを行っているけど、完全にケガを防ぐのは不可能だわ」

(Michaelとダンサーたちがストレッチをしている映像)

(A.P.)
「ケガをする確率がかなり高いわ。というのも、正確さを保つために何度も何度も繰り返し練習するので、脚に負担がかかってしまうの。こんなのはいままでの経験の中でもバレエカンパニーぐらいしかなかったと思うわ。でも、バレエダンサーは何時間も続けて練習をすることはないし、決して3時間も休みなしで、息をつくまもなく同じ曲で踊り続けるなんてことはしないわ」

(Michaelとダンサーたちの『Warlords』のリハーサル風景)

(Michaelがボクシングジムで練習している映像〜Michaelの独白)

(M.F)
「誰も・・・誰もボクシングとはどういうものかなんて考えたりはしなかった。ただ闘っただけだ。誰もダンスとは何かなんてわかりはしなかった。ただ踊っただけだ。僕はその二つを同時にやった。ボクシングをしている一方でダンスもした。それはお互いに役に立ったようだ。」

(Michaelがボクシングジムで練習する映像)

(M.F.)
「ふつう、痛みというのはそう頻繁にあるものではない。(訳注:Michaelのようにボクサーとして、ダンサーとして夢に挑戦し続ける人生の中では、肉体的にも精神的にも)痛みを経験することがこれからもたくさんあることを覚悟しなくちゃならない。
そのうち痛みを常に感じていなければならなくなるだろう。だけどその痛みが肉体的なものではなく、精神的なものなら「気持ちの問題だから」と思うこともできる。
痛みとは常にうまくやって行かなくてはならない。おかしいと思うかも知れないけれど、自分の友人のようにして、それを無視することはできないと認めるべきだ。常にその痛みの中で生きていかなければならないのだが、決して痛みに負けてはいけない。なぜならそうなると、痛みを言い訳にして、なにも成し遂げることができなくなるからだ。

11歳でダンスを始めたときには、始めるには遅すぎると言われた。ほとんどのダンサーは4、5歳で始めるからね。僕はいつも他人とは違う踊り方をした。常にダンスにたいして違う見方をしていた。ルールにしばられるのが気に入らなかった。両腕を脇にくっつけて踊るのが気に入らなかった。他人と同じステップをするのが気に入らなかった。先生についた期間はいままでに3年間しかない。あとは独学だ。そして僕はダンスを常に変え続け、最後に競技会に出た日が、腕を脇につけて踊った最後の日になった。

ボクシングのリングの中で、いいリズムをつかんでいくというのはいいことだ。それによって多くのトラブルを避けることができる。そうすることで他の人のリズムを自然に感じとることができるという意味でもいいことなんだ。
他人のリズムの中で動けるということは、いつどこからそれが繰り出されるかよくわかるということで、ボクシングでは非常に有利になる。

同じことはダンスでも言える。リズムパターンを作り出すためにはまずそれにそれを耳を傾けなきゃいけない」

(画面にはRonan Hardiman と Derek Mc Killop)

(M.F.)
「Ronan Hardimanは天才だね! 拍子と必要な小節数、欲しいムードやフィーリングを伝えると、あとは彼のイマジネーションが自由に広がるというわけ」

(Derek Mc Killop プロデューサー)
「Michaelが私に、1月のはじめに一緒にダブリンに行って・・・まず最初にやらなきゃいけなかった作曲家探しをしようと言ってきたんだ。それで1月のはじめからずっとこっちにいる。ダブリンで『リバーダンス』と対抗するのはとても難しいことだった。
Michaelに対して多くの人々がガードを固くしていて、多くの作曲家やミュージシャンが、コンタクトの取れない状況にあった。私たちはRonanの家まで行って、彼が作曲しているところを見た。彼はモニターを見ながら作曲をしていた。彼は映画音楽やコマーシャル・テレビの画面に合わせるような音楽をよくやっていたから、そこにはテレビモニターがあったんだ。それを見て私たちは苦労が一気に吹き飛んだような気がした。なぜならMichaelはすでに頭の中でダンスを作り上げていたので、そういうやり方で作曲をする人が必要だったからだ」

(Ronan Hardiman 作曲)
「私が素晴らしいと思ったのは、Michaelが信じられないほどしっかりと自分が何を求めているかを認識していたことだ。外から見ても、それがMichaelが関わったそれ以前のどのダンスショーともまったく異なったものになるだろうことは明らかだった。それはよりロック的なアプローチをしていた。またMichaelは、台本の草案を作っていた。ということはつまり、それが演劇性(訳注:ストーリーの流れ、「場面」)を持つということであり、だから彼は自分がどんな曲を求めているかをしっかりわかっていたんだ」

(Michaelが、効果音に耳を傾けている映像)

(M.F.)
「そう、そう、この調子でいこう。いいぞ・・・」

(R.H)
「私はダンスの稽古が始まる1ヶ月前に作曲をはじめた。いつも曲を作った後にいくつか修正が出てくるものなので、前もってできるだけたくさんの曲を用意しておこうと考えたんだ。これはアイリッシュダンスのショーだから、ダンサーが音楽にシンコペートしていくためには、トップラインのメロディーはアイリッシュの伝統的なものにするのが当然だろう。しかし私はまた違った方法を試してみることができた。他の文化圏のパーカッションやリズムパターンを取り入れてみて、私が気に入り、Michaelが欲しがったものばかりが入った「るつぼ」を作っていったんだ」

(M.F.)
「障害はたくさんあったし、毎日新たな問題が持ち上がった。こういう時は、何をしても物事は日々困難になっていくことを覚悟することだ。人は日々変わって行くものだから、日々新たな問題にぶつかる。そのことを最初から受け入れていれば、切り抜けていけるだろう。それができなければ、何事も成し遂げられない」

(A.P.)
「こういうショーを作り上げていく難しさというのは・・・」

(Michaelのリハーサル(稽古)風景)

(M.F.)
「やってみよう。5, 6, 7, 8(Michaelが90度右にターンして、右のつま先でタップ)」

(A.P.)
「Michaelはあらゆる面で指揮(管理)に奮闘していたので、誰もが指示を仰ごうと 彼を引っぱったわ」

リハーサルの最中、Michaelが歩いている。

Warriorsについて説明をしているMichael。しかしその声がタップの音に消されて聞こえにくくなる。

(M.F.)
「うるさい!!」

(A.P.)
「彼が朝起きてくると、私は「Michael・・・」(訳注:ご機嫌をうかがうような表情をして)と待ってるの。そこで一緒の車に乗って稽古場に行くわけ。
そこで私は30分ばかり彼と、やらなきゃ行けないのはこれとこれとこれ、というような話ができるの」

(画面にはMichaelが電話をしている姿、Marie DuffyとDaire Nolanに話しかけている姿。彼女はWarriorsのダンスについて何事か話している)

(A.P.)
「彼がこのショーのクリエイターであり・・」

(再びMichaelとMarie、Daireの姿)

(M.F.)
「そう、そこでターン、ターン、ターン、ターン」

(その「ターン」ごとに90度ずつ回る様子)

(A.P.)
「彼がこのショーのプロデューサーであり・・・」

(画面にはMichaelとMarie、衣装担当と数人の人々)

(M.F.)
「強く、荒々しい感じがいいんだ・・・」

(Michaelが、その場から離れようとする人たちの方を向く)

(M.F.)
「行くのかい? オッケー、戻るんだね・・・」

(何人かが)
「そうさ!」

(M.F.)
「ハッピーかい?」

(何人かが)
「とっても!」

(Michaelが後ろにいる男性陣に)
「君たちはハッピー?」

(男性陣)
「もちろん!」

(M.F.)
「俺たちは間違ってないよな?」

(訳注:誰かが応えますが、聞き取れません)

(M.F.)
「Jim、俺たちは勝つかな?負けるかな?」

(Jim)
「来年は豪華なパーティ三昧さ!」

(Michaelが笑いながら右の拳を突き上げる。周りの男性陣が笑って言う)

(男性メンバー)
「言うねえ!」

(みんなの笑い声の中、Jimに向かって)

(M.F.)
「これだよ! ほらね! 言っただろ! 言っただろ!」

(A.P.)
「彼はこのショウの主役でもあるから、出演者としての自分のことも考えなければならないわ」

(Michaelがウォーミングアップを終え、稽古場のダンサーたちの前に立つ)

(M.F.)
「だいぶよくなっているけど、ここはもっと重点的にやろう。全員がそれぞれの位置で、同じステップを同じタイミングでやるんだ。いままでできてなかったけれど、もうできていいはずだ。

集中してやらなきゃいけない。時には本当に厳しく、必死になる必要があるんだ。」

(再び稽古風景)

(M.F.)
「ごめん、続けてくれ。まだ充分じゃない。もうちょっとなんだけれど。もう一回、いくぞ、5, 6, 7, 8, ・・・」

「オレのことを鬼軍曹というなら喜んでそのあだ名を受けるよ。何にしたってこれはやらなきゃいけないんだ」

(再び稽古風景)

(M.F.)
「これで全部だ、さあ5, 6, 7, 8・・ここが一番大事なところだ。オレがここを出てきて、走っていく。だから、君たちはその時そのステップで少し下がって、走る準備をしていてくれ。走る、いい?よし、もう一回だ。」

(完璧な出来の「Warriors」。再びMichael)

(M.F.)
「今日はここで終わりにしよう。続きは明日だ。いい出来だ。きょうはいままで生きてきた中でいちばんのものを見たよ。これ以上のものはなかなかないね。素晴らしかった!」

(A.P.)
「初日が待ち遠しいけど、同時に不安でもあるわ。観客には私がリハーサルで感じたことと同じように感じて欲しいし、きっとそうなると思う。これを観客に披露できると思うとわくわくするし、実際ダンサーたちが舞台に立ったら、きっといままで経験したことがないような反応が客席から返ってくると思うわ」

(M.F.)
「いまは6月28日だけに照準を合わせている。正直言えばそのあとはボーナスみたいなものだ。その日までは、僕がまず白紙のキャンバスをうち立て、みんなでこの作品を描き、その作品をその晩、ポイント・シアターに持っていくというそのことだけが、自分にとっていちばん大事なことなんだ」

(A.P.)
「そしてそれはうまくいくでしょう。きっと。ホントに・・もうすぐね」

(Warriors、Hells Kitchenの音なしでの稽古風景)

(女性メンバー)
「彼女は3日前足首を痛めてしまったの。彼女はどのダンスにも出るから・・・」(みんなが彼女に同情している。彼女は毎日劇場にきて、一刻も早く復帰したがっている様子)

(脚を痛めた彼女のアンダースタディ(代演)が映る)

(アンダースタディ)
「ハイ、私は・・・きょうチームに合流したばかりなの。ケガをしてしまった子がいて、その代わりになったのよ。出来がよかったらずっとこの役でいられるかも・・・」

(Marieが何かを説明している)

(アンダースタディ)
「一度に全部のステップやフォーメーションをおぼえるのは大変だわ。ひとつひとつのステップや何かはおぼえられるし、フォーメーションもわかるんだけど、ぜんぶが一緒になると、わからなくなっちゃうのよ・・・」

(舞台が設営され、監督と照明スタッフが話し合っている。いっぽうステージ上ではMichaelと花火スタッフが話し合っている。

(M.F.)
「そして僕が彼女をこうやって指さす。つまり・・・、こんな風にして1、2、3、で3のところで爆発してほしい」

(しゃがんでから、立ち上がって手を上にあげ、ショーのラストの花火の爆発のジェスチャーをしてみせる)

「オッケー、そうだ。そうしたらまず君のことを指さす。いいね?」

(画面ではポイント・シアターでのリハーサルの様子が映る。ドレスリハーサルで、「Warlords」の衣装を付けたMichaelが、客席側から「Gypsy」を見ている。Michaelとダンサーたちが「Victory」のフィナーレのフォーメーションに並んで、カメラマンのためにポーズを取っている。衣装担当が衣装の最終調整をしている。ダンサーたちがテレビの前に集まって、前の日観客を入れて行われたプレビューの様子が放映されるのを見ている。つまり開演当日になったということだ。

アナウンサーが、その日ショーが開演することを伝え、プレビューの際の観客へのインタビューの映像が流れる。観客の反応は熱狂的なものであった。ダンサーたちはそれを見て大喜びした。Michaelは後ろの方で、そんな彼らをほほえんで見ていた。まるで、父親が少し自慢げに自分の子供を見るように。(訳注:観客の一人が「more powerful than Riverdance!」かなんか言った瞬間、それを見ていた若いダンサーたちが「キャーッ!!」って感じで盛り上がって、それをMichaelが後ろから見ていて、やさしそうにニコニコしてます。いい感じです。)

開演が近づき、だんだんと準備が忙しくなってくる。Michaelはプロデューサーの一人と話している)

(M.F.)
「いよいよだな」

(プロデューサー)
「ああ!」

(M.F.)
「開演前に舞台に上って言っておいてくれないか、『みなさん、シートベルトをお締めください』って」

(M.D.)
「みんな興奮していて、ナーバスになってるヒマなんてないわ」

(D.M.K.)
「これが、6ヶ月の努力の成果なんだよ・・・」

(ビデオ冒頭と同じ映像。Michaelが「Cry of the Celts」の衣装で楽屋から出てくるところからすべてが動き出す。「Lord of the Dance」の導入部をBernadetteとGillianが踊っている。舞台裏で Michaelが男性ダンサーたちと喊声をあげながら控えている。そしてまた「Lord of the Dance」の導入部の映像。Michaelたちの準備ができたようだ。)

(M.F.)
「(あいつらが)行ったぞ! 行ったぞ!(訳注:次は自分の出番だ!ということ)」

(「Lord of the Dance」のMichaelのソロ、そして最初のスタンディングオベーション)

(John Reid プロデューサー)
「なんて連中だ!すごいぞ、あいつら、3ヶ月前にはまだネンネだったのに!」

(フィナーレからみんなが戻ってくる)

(J.R.)
「いままで見た中でいちばん鍛えられて、いちばんエネルギッシュで、いちばんかっこいいチームだよ!」

(Michaelが終演後、ステージから帰ってくるダンサーと手をたたき合っている。)

(M.F.)
「よーし、みんなよくやったぞ!」

(J.R.)
「後半を見に行かなくちゃ。」

(Michael、ショーの後の屋外でのインタビュー)
「ダブリンでの経験ほど印象に強く残るものがあるとは思えないね。どうにもダブリン公演は大きな挑戦だった。

ロンドンからはじめることもできたんだ。そうすればいろいろつらい思いや、無理をしなくて済んだだろう。きっと資金的にも楽になって、他の場所でも公演しやすくなったかもしれない。でも僕はせっかくのチャンスを無駄にしたくなかった。だから あのダブリンから始めたんだ。それは僕がやらなければならないことだったし、自分がそうしたことについてはいまも満足している。僕は自分自身をとてもアイリッシュだと考えている。もちろん、僕はアイルランド系のアメリカ人なんだけれども、心はつねにアイルランドにあるんだ。

このショーを作り上げられたこと、そしてダブリンで開演できたことは誇りに思っている。僕の人生でいちばん大きなステップは、キャンバスを立ちあげて、この作品を描く(作り上げる)ことができたということだ。それからのことはボーナスみたいなものだね。でも途中で投げ出したりしてたら、ボロクソに言われただろうな」

(開演初日、「Victory」のエンディングで、プロデューサーたちが花束を持って現れ、拍手をしたり歓声をあげている観客に応える間、Michaelは彼らをダンサーたちとともに舞台にとどまらせる。)

(M.F.)
「これはとても特別な何かなんだ。それはどこか新しい境地に到達しようとしていて、みんなそれを気に入ってくれている。それがどんなものであっても、言葉で説明するのは難しい。だけどそれはそこにあるんだ。目の前に実在して、どんどんいい方向に向かっている。ぼくは心からこのショーが好きだし、あのlittle spiritが登場して笛を吹くところから・・・」

(「Lord of the Dance」のテーマを口笛で吹いてみせる)

「あのメロディを聴くと・・・あれは魔法なんだ。魔法の音。あのメロディが鳴り出してから最後に花火が打ち上がるまで、あれは夢なんだ、夢が目の前に繰り広げられるんだ。もし他のショーをやらないで死ねたなら、僕は幸せな男だ。僕はこの作品と、関係する全ての人たちに誇りを持っている。なんてすばらしいチームだろう!ホントにいいチームだ。こんな人たちに囲まれたら、うまく行かないわけがないじゃないか」

(M.F.)
「いまは暴走列車みたいに凄い速さでうまく運んでいるようだ。僕たちは感謝しなければ」

(ラストのアンコールと花火のシーンで終了)

SEE ALSO
Lord of the Dance
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