コラム:いか踊りの真実
1998年9月、JR武蔵境駅前スイングホールで開催された「HIPTAPS 2」ライブ(2004年moriy注:そんなことをやってたんです)において、なぜか舞台、客席ともに異様な盛り上がりを見せたのが、和太鼓チーム「吾空」の片桐氏による「いか踊り」でした。片桐氏が旅の途中に出会って以来ハマり続けているという、この謎のパフォーマンスについて今回は探ってみようかと。
いか踊りのCDってのがあって、片桐氏がライブ当日に使った音源もそれなんですけど、そのパッケージについていたのがこの「HOW TO イカ踊り」。その各動作を分析することで、いか踊りがなぜあれほども人の心を打つのかを考えてみましょう。
より音に忠実に書くと、「はっこだってめっいぶっついっかおっどりっ!」という日本伝統のノリ。
豊かな海の幸をもたらす神を呼び起こす基本動作。柏手ともいう。
ただ手を大きくあげるだけ。ジャンプはしない。
軟弱なイカの組織の中で唯一、スジを通しつづける軟骨のあり方に対する、頑固一徹の海の男たちの共感が伝わってくる。
「おねんねする」のジェスチャー。
寝かせる=発酵させるのメタファーと考えられる。また、死んだイカの内臓がふたたび有用な食品として再生することを幼児の姿で表現するところに、東洋の輪廻的世界観の影響が見られる。
「塩から」において、斜めに合わせていた手をすりあわせて伸ばす。
古式泳法の「抜き手」を元にしていることは明らかであり、海に生きるものは泳ぎが達者でなければいけない、という厳しい現実を規定している。
ふたたび神の注意を引き、次の動作に備える。
・・・なんだ「ポッポ」って。
と、書いていたら函館市観光課さまより(恐縮です)教えていただきました。
「イカポッポ」というのは、割りばしにさしたイカの姿焼きのことです。こちらの方では「イカポッポ」といいます。ご参考いただければ幸いです。
大相撲の土俵入り等における摺り足にも通じる、大地の力強さの表現。
北海道は山の幸も豊富であることを再認識させる。
海と山、さらに世界全体への感謝、そして喜びを全身で表す。
・・・片桐氏曰く、「東京における東京音頭と同じように、函館では夏、みんなでこのいか踊りを踊るのだ」と。こんな力の抜けたパフォーマンスが函館名物のハズがない、と周囲の誰もが信用しなかったのですが、調べてみるとこれがけっこうなもので。函館港まつりでは何万人という規模で踊るらしいですよ。