コラム:百万人の演出講座
何年か前、浅草キッドのラジオで「百万人のギャグ講座」というコーナーがありましてね。
「百万人ギャグ」というのは、もう完全に陳腐化しているにもかかわらず、みんなが口にし、なおかつそれでみんなが笑ってしまうようなフレーズのこと。
それと同じように、劇場においても、観客全員が「またぁ?」と思いながらも総毛立ってしまうのが「百万人の演出」。まさに劇場の最終兵器・・・。
(その1)開演時の大音量
開演のブザーが鳴る。
会場のBGMがフェードアウトしていく。
客席の明かりが消えていく。
無音。
まだ観客の目は暗やみに慣れない。
・・・無音。
客席が次第に不安感をおぼえ始めるころ(心理学専攻の方々、最適な時間を計測してくれまいか)、これでもか!という大音量で低音を強調した曲を流して開幕。これで完全つかみはオッケー。
選曲としては初期のenyaさんとか、Anunaの男性コーラスとか。いまならADIEMUSでいかがでしょうか。
(その2)女の子の悲鳴
ホラーに限らないんですが。
照明がだんだんとフェードアウトし、スポットもしくは薄い照明だけが残り、そのあかりが切れた一瞬のちに女の子の
「きゃぁああああああああ!!!」
という悲鳴がする・・・という流れはもういい加減にしてほしいけど、やっぱり効果がある。
照明効果をいれなくても、脈絡がなくても、可愛い女の子におもいっきり
「いゃぁああああああああああああああ!!」
と叫ばせればとりあえずみんなゾワッとするんじゃないだろうか。
(その3)泣く子
なんにせよ小さい子供は無敵だ。暗い舞台上にぽつんと立たせ、
「ママぁ・・・」
とつぶやかせればオッケー。
(番外)ヒグラシの鳴き声
カナカナカナ・・・という遠いセミの声を聞けば、「ううっ、今年の夏も結局なんにもできなかったよお」というあの、夏休みが終わる頃のなんとも切ない気分になるでしょ。ちょっと弱いけどね。
(その4)パッヘルベルのカノン
前後がどんなに低俗な内容でも、この曲さえ流しておけば心の洗われるような神々しいシーンになるという魔法の曲。
照明は舞台ななめ上方から白色光のスポット1本で決まり。場内に浮遊する塵が光ってなお佳し。