コラム:Airっぽい生活
そのスタイルを「air」と呼ぶことを知ったのは、SOLASの1枚目を買ったときでした。
この人たち、アルバムのジャケットに「reel」とか「jig」とかひとつずつ書いてくれてるんです。親切でしょ?
決まったリズムがあるような、ないような。楽器も笛だけとか、パイプだけとか。ほかの楽器が加わっても、複雑な和音になることはあんまりなくて、同じメロディを、ユニゾンで、ゆったりと、なぞっていく。
はっとするような音楽では、ないです。
アルバムを何度か聴き込んでいくうちに、なんとなく、少しずつしみこんできて、ふと気がつくと、耳のうしろあたりでずっと流れていたりするような、そんな音楽。
airを聴いていると、浮かんでくるのはどこか架空の風景。
雲を見上げていたり、高いところから草原を見下ろしていたり。
遠くの枝が揺れて、風が近づいてくるのがわかったり。
・・・あの風はどんな匂いだろう?
疲れたゆっくりじゃなくて、満ち足りたゆっくり。
音の数は少なくても、しっかりと満たしてくれるair。
余裕のない生活をしていると、だんだん自分のリズムがわからなくなってくることってありませんか? 世の中のテンポについていけないように感じるとき。
新しいステップについていけないときと同じです。頭が飽和して、一瞬その場に凍り付く。曲はどんどん進んでいく。落ち着いてやればそんなに難しいことじゃないはずなのに、うまくいかない。
でも、まわりがみんなそうだったりすると、何が正しいのかもわからなくなって、結局だれのでもない、やたらと上滑りしたリズムのまま流されてしまう。
やるべきことがあるのはわかっているのに。ちゃんとできるはずなのに。
そういうとき、air。
一度リズムを全部捨てて、またはじめから、一歩ずつ、自分のペースで。
いいコミュニケーションって、絶対値としてあるんじゃなくて、お互いに作り上げていくものだと思うのです。難しいことを一生懸命やってても、理解してもらえなければ意味ないですもんね。
逆に、送り手が「1」しか表現できなくても、受け手が「10」理解してあげれば、それは「10」の表現として評価されるんではないかと。(もちろん、もともと10以上の内容があることが前提ですが)
息が合う、とか、間がいい、とか。メッセージの送り手と受け手が、おなじ空気をつかんだ瞬間を表現する言葉。
そして、air。
「人気」「雰囲気」とかいうときの「気」と言い換えてもいいかもしれません。
そんなairをいっぱい感じられる生活がしたいなあ、と思うのです。